2021年10月15日号
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artscapeレビュー

新世代への視点2012

2012年09月01日号

会期:2012/07/23~2012/08/04

ギャラリーなつか[東京都]

毎年夏、銀座・京橋の貸画廊が合同で企画している展覧会。12回目を迎えた。各画廊が推薦する40歳以下の新鋭作家による個展を同時期に催したが、とりわけ特定のテーマを設定しているわけではないにせよ、今回は全体的に見応えがあった。具象絵画では、安部公房の世界を彷彿させる杉浦晶(ギャラリーなつか)や日本画の手法によってロック少女を描く永井優(ギャラリーQ)、深い青を基調に夢幻的な光景を描く高井史子(gallery 21yo-j)、背景の墨絵の上に切り絵を重ねることでポップな図像を浮かび上がらせた劉賢(ギャラリイK)。抽象画では、色彩の自動運動により画面を構築する杉浦大和(なびす画廊)やさまざまな色合いの紙テープを同心円状に果てしなく巻きつけた内山聡(ギャラリー現)、ボールペンの緻密な描きこみを続ける大森愛(ギャラリー川船)。そして立体では、朴訥としながらもどこかで奇妙なおかしさを感じさせる木彫の長尾恵那(GALERIE SOL)やケント紙だけで精巧なオブジェを組み立てる伊藤航(ギャラリー58)、人間と動物を融合させたテラコッタによって人間社会を風刺した友成哲郎(ギャルリー東京ユマニテ)。とりわけ注目したのが、版画の原版と、それを転写した和紙をセットにして見せた本橋大介(藍画廊)と、日常の凡庸な不要物を構築した小栗沙弥子(コバヤシ画廊)。本橋は転写という版画のもっとも基本的な機能に依拠しつつも、それにとどまらず、原版をあわせて展示することによって、そこに時間性を巧みに導入した。版画はえてして無限反復という無時間性に陥りがちだが、本橋はそれを有時間性に落とし込むことによって逆に版画の可能性を切り開いた。レシートや領収証、紙袋などを構築した小栗のインスタレーションは、日常的な廃物利用という点ではいかにも今日的だが、小栗の真骨頂はむしろ小作品にある。ガムの包装紙だけを集積した小さな絵画は、その銀色が意外なほど美しい。文房具売り場に常設してある試し書きのためのメモ用紙をかき集め、そこに残された走り書きだけで画面を構成した作品もおもしろい。こうした作品がいずれも小栗の外部の他者に由来していることを考えると、おそらく小栗は描く主体をできるだけ放棄しながらも、それでもなお描くことが可能かと自問自答することに挑戦しているように思われた。

2012/07/28(土)(福住廉)

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