artscapeレビュー

田村葵「out of the fantasy」

2013年02月15日号

会期:2013/01/12~2013/01/20

祇をん小西[京都府]

昨年は、京都の大河内山荘に新しく建てられた庵、妙香庵の襖絵という大作も手がけた田村葵。今回個展を開催していたのは多くの観光客で賑わう祇園花見小路の元“お茶屋さん”を改修したギャラリースペースだった。ギャラリーといってもこちらは「おくどさん」の名残りもとどめた土間もある、京都の古い家屋の佇まいをそのまま残した建物で畳の部屋が展示スペースである。今展では立体と平面による《out of the fantasy》という一連の新作がこの空間にインスタレーションされた。どの作品もほとんど色は使われておらず、余白を残した画面に墨で自然の風景、少女が遊ぶ姿などがまばらに描かれている。一見、描き方やそのモチーフに強い存在感はないのだが、近づいて見ると水面やシャボン玉に周囲の景色が映り込む情景、輪郭ははっきりしているが映像を重ねたように図と背景が溶け合うイメージなど、墨の濃淡と筆使いによる表現が繊細であるのがわかる。さらに、描かれたそれらの儚げなイメージは、例えば一面の窓ガラスや台座など、展示空間のあちこちに鏡面反射し、映り込むようにも意図されていた。現実と幻想のあわいというイメージを実際の空間にも創出しようというその試みは興味深い。できれば他の会場空間でも見てみたい。


会場風景


田村葵《out of the fantasy》(部分)


田村葵《山1302》

2013/01/19(土)(酒井千穂)

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