artscapeレビュー

嵯峨芸術大学第42回制作展

2014年03月15日号

会期:2014/02/05~2014/02/09

京都市美術館[京都府]

京都では恒例の各大学の卒業制作展のシーズン。2月に入り、最初に始まったのは京都嵯峨芸術大学の制作展で、京都市美術館に芸術学部4回生、大学院生、短期大学部2回生、専攻科生の作品が展示された。同大学の芸術学部は、日本画、油画、版画、彫刻、工芸、メディアアートからなる造形学科と、イラストレーションや生活デザイン、観光デザイン、グラフィック、映像などを学ぶデザイン学科の二学科に分かれている。展示は全般に私が期待していたより低調な印象で、また、昨年も同様に感じたのだが、どちらかというと造形学科よりも観光デザインや生活デザインなど、デザイン学科の学生たちの作品のほうがコンセプトや完成度においても目を引いた。若い人たちのイマジネーションや創作意欲について思うことが多かった会場。面白かったのはメディアデザイン学科・川上達弘の《The cubes 子ども達のための総合的知育玩具の提案》。大きなキューブに取り付けられた赤、青、黄、白、緑の5色の「引出し」を開けるとそれぞれに小さな玩具が入っていたり仕掛けが組まれているという作品なのだが、視覚や触覚、好奇心などの感覚だけでなく記憶のイメージも刺激するから子どもだけでなく大人も魅せられる。実際そこで、くまなく引き出しを開閉していた年輩の鑑賞者を見かけたのだが、そんな光景も楽しい作品だった。


展示風景。川上達弘《The cubes 子ども達のための総合的知育玩具の提案》

2014/02/09(日)(酒井千穂)

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