artscapeレビュー

イメージの力──国立民族学博物館コレクションにさぐる

2014年03月15日号

会期:2014/02/19~2014/06/09

国立新美術館 企画展示室2E[東京都]

とても刺激的な展覧会だった。大阪・千里万博公園の国立民族学博物館が収蔵する34万点もの民族資料から、約600点を選りすぐって展示している。「プロローグ─視線のありか」のパートに並ぶ世界各地のマスクから、「第1章 みえないもののイメージ」「第2章 イメージの力学」「第3章 イメージとたわむれる」「第4章 イメージの翻訳」「エピローグ─見出されたイメージ」と続く展示は、圧巻としか言いようがない。目玉が飛び出し、口が裂け、体のあちこちが極端にデフォルメされたマスクや神像は、リアルな再現性からはほど遠いものだ。にもかかわらず、それらは魂の奥底に食い込み、始源的な記憶を引き出してくるような強烈なパワーを発している。これらのコレクションを見たあとは、並みの現代美術などは吹き飛んでしまうのではないだろうか。
考えたのは、このような民族資料を写真として提示するときにはどのような形がいいのかということだ。本展のカタログにも展示物の写真が掲載されているが、典型的な白バックの物撮り写真で、面白みはまったくない。たしかに、出品物の外観は細部まできちんと捉えられているが、あの圧倒的なパワーが完全に抜け落ちてしまっているのだ。理想をいえば、マスクや衣装や装飾品は、それらを実際に使用している人たちに、その場で身につけてもらって撮影したい。彫像なども現地の環境で見ると、まったく違った印象を与えるのではないだろうか。ちょうど津田直のサーメランドの写真のなかに、民族衣装を身につけた住人の素晴らしいポートレートがあったのを見た直後だったので、余計にそう感じてしまった。

2014/02/21(金)(飯沢耕太郎)

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