artscapeレビュー

東日本大震災被災地めぐりロケ 2(南相馬市)

2014年03月15日号

[福島県]

引き続き、毎日放送の取材で、福島の小高へ。駅から西側は、地震の被害は軽度、津波も1階に浸水程度だったが、しばらくは立ち入り禁止区域となり、いまも放射線量のため日中のみ居ることが許され、夜は泊まれない。一見、普通の駅前のメインストリートなのに、誰も歩いていない。除染の袋だけがあちこちに積まれていた。20km圏内で止められていたとき、仙台から南相馬へ下りると、二軒の住宅のあいだに境界線が引かれている理不尽な場所があり、ここは園子温の映画『希望の国』の着想源になったところだ。今回、現状を知るべく再訪すると、まだ同じ場所に通行禁止の柵があった。20km圏がなくなったのに、なぜか境界線が残っている。その後、20km圏内で手つかずだった他の場所をまわると、現在も壊れた建物がそのまま残っている。石巻や女川では、かつて目にした廃墟は消えたが、ここでは3.11から時間が止まったかのようだ。生活の雰囲気が残った、一部損壊になった海辺の農村集落を歩く。こうした場所は、放射線の影響で震災遺構となるのかもしれない。被災地をあちこち案内しながら、いつのまにか自分も直後の風景を記憶している語り部のひとりになっていることに気づく。もっとも、これは2011年3月下旬に思ったことなのだが。南相馬から仙台に戻る途中、東北大の五十嵐研が手がけた仮設住宅地の塔と壁画のある集会所に立ち寄る。カラオケ大会の最中で、楽しそうに使われていた。

写真:上=誰もいない小高のまち。中上=除染袋。中下=生活の雰囲気が残る農村集落。下=塔と壁画のある集会所。

2014/02/21(金)(五十嵐太郎)

2014年03月15日号の
artscapeレビュー