artscapeレビュー

セデック・バレ

2014年03月15日号

映画館で見逃した『セデック・バレ』をようやくDVDで見る。日本統治下の台湾で起きた原住民の武装蜂起事件を描いた作品だが、恥ずかしながら、1930年の霧社事件そのものを全然知らなかった。二部構成で、合計4時間半である。凄まじく気合いの入った大作だ。最近、日本映画にこういうレベルの作品がないことを寂しく思う。日本への不満が蓄積していたとはいえ、霧社事件の大量殺戮が連鎖するきっかけは、実に些細なトラブルだった。むろん、映画の作りがそうなっていることを差し引いても、興味深いのは、日本人が見ても、セデック族を支配し、事件を契機に容赦ない反撃をする日本人よりも、セデック族に感情移入させることだろう。それはセデック族がたとえ民族が滅んでも、負けを覚悟で、誇りのために闘うこと、女性や子どもが集団で自決を選ぶからである。これは太平洋戦争時の日本の悲惨なメンタリティを先取りしたかのようだ。ただし、日本と違い、セデック族の場合は国家が仕向けたわけではない。

2014/02/01(土)(五十嵐太郎)

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