artscapeレビュー

武井武雄の世界展

2014年09月15日号

会期:2014/08/06~2014/08/18

大阪高島屋7階グランドホール[大阪府]

大正から昭和にかけて、『コドモノクニ』『子供之友』『キンダーブック』などの児童向け雑誌で活躍したことで知られる武井武雄の生誕120年展。本展は「童画」という言葉を生み出し「こどもの心に触れる絵」の創造を目指した武井の過去最大となる展覧会で、童画、刊本作品、版画、おもちゃ、陶芸など約400点が展示された。水彩絵の具とクレヨンにの童画にはじまる会場の展示は、武井の美的センスと世界観を十分に満喫できる充実したボリューム。なかでも私が目を奪われたのは豆本サイズの刊本作品の数々だった。生涯で作られた139の刊本作品全てが展示されていたわけではないが、その美しさたるやまさに息を飲むほど。物語づくりはもちろんだが、装丁も自ら手がけたという武井のこれらの刊本作品は、紙や活字などの細部にも強いこだわりが表れていた。実際に手に取ってみたいもどかしさにも襲われながら至福のひとときを味わえた展示。

2014/08/17(日)(酒井千穂)

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