artscapeレビュー
ランドマーク・プロジェクトV──小山穂太郎+石内都+川瀬浩介
2014年09月15日号
会期:2014/08/01~2014/11/03
関内周辺[神奈川県]
今日はランドマーク・プロジェクトを重点的に探索。まず向かったのは鶴見線の国道駅。ここは5年ほど前、鶴見線の各駅を使ったアートプロジェクトをやっていたので訪れたことがあるが、改札口直結のガード下がレトロな飲屋街(現在は1軒しかやってない)になっていて、いまも昭和30年代の空気が淀んでいる。今回は閉店した店をおおうベニヤ板の上に、横浜港の海を撮った小山穂太郎の巨大なモノクロプリント約10点を展示。これはスゴイ。場所ともども一見の価値あり。次は馬車道駅近くの帝蚕倉庫へ。再開発のため1棟しか残っていない倉庫を囲む塀に、カイコの繭から生糸(シルク)、色鮮やかな絹織物まで撮った石内都の写真シリーズ「絹の夢」を並べている。帝蚕倉庫は文字どおりかつて主力輸出品だった生糸を保管するために建てられたものなので、倉庫の周囲から歴史をあぶり出すかっこうだ。ここにはもうひとり宮本隆司の作品があるはずなのだが、うっかり見落とした。その後ギャルリーパリに寄り、フランシス真悟キュレーションの「ミクスト・アップ!」を見て(レビューは省略)、1928年竣工の「キング」と称される神奈川県庁舎へ。1階に川瀬浩介の呼吸するように光る作品が置いてあるが、夏休み限定でビアガーデンとして開放された屋上にも、川瀬による光る植木鉢状のオブジェが20個ほど並んでいる。黄昏時に築90年近い建物の屋上で、ぼんやり明かりをながめながらビールを飲めるなんて、県庁も粋な計らいをするものだ。
2014/08/16(土)(村田真)