artscapeレビュー
平成知新館オープン記念展「京へのいざない」
2014年11月01日号
会期:2014/09/13~2014/11/16
京都国立博物館 平成知新館[京都府]
京都国立博物館に平成知新館がオープンした。設計は谷口吉生。丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、豊田市美術館、ニューヨーク近代美術館などを手掛けた美術館建築の第一人者である。建物は、地下1階、地上3階の4階建て。1階エントランスの開放感あふれるガラス張りのロビーには、谷口建築らしく、屋外噴水の水面に反射した光がゆらゆらと差し込む。展示会場に一歩足を踏み入れると、目の前に現われる15駆もの仏像の大きさと迫力に圧倒される。その1階から3階まで吹き抜けの彫刻分野の展示空間を囲むように、書跡、染織、金工、漆工など分野ごとの展示室が各階に配置されている。
本展では、京都国立博物館所蔵の重要文化財級の名品逸品が惜しみなく出品されている。染織分野の第一期の展示は、桃山時代から江戸時代にかけての小袖が中心になっている。なかでも、もっとも古いもののひとつ、「白地草花文様四つ替小袖」は、春の梅、夏の藤、秋の楓、冬の雪待ち笹を四つ替えにデザインした刺繍箔の小袖で、一面を埋め尽くす渡し繍の重厚感と草花の特徴をとらえた文様の伸びやかな大胆さが対照的で面白い。同時代の「雪待ち橘文様小袖」は、織り模様でありながら刺繍のような緻密さで色彩豊かに織り出された文様がいかにも愛らしい。いずれも、染織技術の急速な発展を支えた人々の意気込みとエネルギーを伝えている。また、江戸時代後期の婚礼衣装、「束ね熨斗文様振袖」では、友禅染を中心に、刺繍、摺り箔、型鹿の子などさまざまな技法を駆使して松竹梅、桐、鳳凰、鶴、牡丹、青海波などの吉祥模様が表わされており、贅をつくした衣装の醍醐味を味わうことができる。
第二期(2014年10月21日~11月16日)の染織分野の展示では、「神と仏の染織」と題して空海上人や最澄上人のものと伝わる袈裟をはじめ熊野速玉大社の唐衣など、第一期より時代をさかのぼる国宝の数々が出品されるというから楽しみである。[平光睦子]
2014/10/07(火)(SYNK)