artscapeレビュー

プレビュー:『とつとつダンスpart.2 愛のレッスン』

2014年11月01日号

会期:2014/11/28~2014/11/30

アサヒ・アートスクエア[東京都]

ぼくはかねてから、未来を明るくする最大の焦点は、身体に障害のあるひとや高齢になって身体が十分に働かないひととどう共存し、互いの幸福を高めていくかを考えることではないかと思っています。「健常者」がノーマルでありそのノーマルを基準に社会をつくるべきだという通念から自由になること。例えば、オリンピック/パラリンピックの区別がなくなったら、それだけでも社会はよくなる気がするのです。既存の価値が転倒し、混乱するだろうけれども、その混乱から始めることなしに、明るい未来はないはずです。身体というメディアで表現をする振付家・ダンサーこそ、美しく優れた身体を誇示するエリート主義から自由になって、そうした混乱を引き出す存在でいて欲しいと思います。さて、砂連尾理は第1回のトヨタ コレオグラフィーアワードで「次代を担う振付家賞」を寺田みさことともに獲得したダンス界を牽引する存在。これまでも、ベルリンの劇団ティクバとの共作などを通じて、健常者と障害のあるひととの交流のあり方を模索してきました。砂連尾が今回取り組むのは、車椅子の高齢者。特別養護老人ホーム「グレイスヴィルまいづる」との四年におよぶ交流を通して生まれた上演作品が『とつとつダンス part. 2 愛のレッスン』。ダンスは社会において、どんな価値を発信できるのか? 砂連尾はときどき「フィクション」の意義ということを発言していますが、そうした考えが本作を通してどう示されるのか、期待してしまいます。

2014/10/31(金)(木村覚)

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