2019年07月15日号
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artscapeレビュー

Q『油脂越しq』(『flat plat fesdesu vol. 3』Aプログラム)

2014年11月01日号

会期:2014/10/15~2014/10/21

こまばアゴラ劇場[東京都]

Qの演劇は微妙なバランスを保って進む。人間へのまなざしというか距離感が絶妙で、人間の暗部を暴露するとはいえ、それを遂行する際の対象に向けたまなざしが誠実で優しい。チェルフィッチュや岡崎藝術座に似てしばしば役者は観客に顔を向けて独白する。中身は「現実にそんな告白されたらちょっと困るな」と思うような性的な妄想だったりするのだけれど、特徴的なのは、肉体に宿した突き上げてくる衝動がすべての言葉の動機になっているところだ。肉体が言語を生む。そんなスタンスの劇団はこの世にそんなに多くは存在しない。そのうえで付け加えたいのだが、コメディともとれるユーモアの要素が今回際立っていた。まさに絶妙な人間への距離感がそれを可能にしていた。30分程の短編。コンビニの女店員2人と魚肉ソーセージを大量に購入する女1人の物語。3人それぞれ性の記憶と妄想にとりつかれている。共通の趣味(GLAYのファン)が元で男の部屋に遊びにいった太めの女。58才の男と恋愛している若い店員。2人の存在に刺激されてオナニーばかりしているもう1人の店員。今回のQがユーモラスだなと思わされたのは、そうした3人の性衝動が、いつものQのように背後に暴力性を漂わせていながらも、「止むに止まれぬ内側からの突き上げ」として描かれていたからだろう。人間のおかしさや悲しさやかわいさが、それを源に溢れ出していた。魚肉ソーセージは、たんに魚だけではなく、人間も含めた多様な動物たちの肉をミンチにしてできているという妄想が語られる。いつものQらしい異種性交のイメージがコンパクトにこの妄想に収められた。それにしても、市原佐都子の、肉体と肉体が接触することへの執拗な興味というのは強烈で、ぜひここだけ取り出して現代美術のフォーマットに落としてみて欲しいなどと思ってしまう。そのインパクトはより広くそして的確に鑑賞者に受容されるだろうとも。

2014/10/19(日)(木村覚)

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