2019年11月01日号
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artscapeレビュー

田辺知美+川口隆夫『めっひっひ まあるめや「病める舞姫」をテキストに、2つのソロダンス』(特別公開リハーサル in 女子美術大学)

2014年11月01日号

会期:2014/10/18

女子美術大学(杉並キャンパス)[東京都]

最近、川口隆夫の活動が活発だ。8月から始めた『Slow Body』の公演は続いているし、毎週のようにタイトルの異なる上演に挑んでいる。その最中での今作上演。11月に青森で予定されている本公演のための公開リハーサルとして、川口が今年度非常勤講師を務める女子美術大学を会場に、教え子たちが運営に関わるほのぼのとしたムードのなか行なわれた。全体60分ほどのなか、前半に踊ったのは田辺知美。畳一畳の上で踊る。時折、暗黒舞踏の創始者・土方巽が書いた小説『病める舞姫』の一部分がスピーカ越しに朗読される。例えばそれは「寝たり起きたりの病弱な人が、家の中の暗いところでいつも唸っていた。畳にからだを魚のように放してやるような習慣は、この病弱な舞姫のレッスンから習い覚えたものと言えるだろう」なんて台詞。確かに田辺の身体は畳の上で唸る。時折痙攣する。しかし、その状態を起こすための作為がなんとなく透けてしまっていて、あまり乗れない。とくに全身を(顔までも)覆う肌色のタイツはエロティックと見えなくもないけれど、一方で身体のあり様はタイツのせいで隠れてしまう。最後に、自らストッキングを破るのだが、その手の非ダンス的な能動性がダンスを消している。田辺がそうして身体を隠したのと対照的に、川口はどこまでも曝す気満々だ。田辺と交代で舞台に現われた川口は顔にオレンジの袋を被り、足に赤いジャージを履いて、あとは裸だった。ぎょっとさせられたのはジャージの股に開いた「穴」。それは明らかに男性にはない位置に開いたものだ。ろくでなし子(事件)へのアンサー? そんな気持ちも過りつつ、興味深かったのは、これが女性でなく男性だからこその表現に映ったこと。女性にはもともと女性器はあるので、このように衣服で暗示してもわざとらしい。男性にはない分、この「穴」が男性の股にあると暗示として機能しやすい。そう思っていると、浄瑠璃の一節を川口は朗誦しながらパフォーマンスを続けた。自分で自分の身体を縛るような奇妙な悶絶の時間もあった。「踊り」ではなく「パフォーマンス」であることが、田辺と比べ川口を自由にしているようにも見えたし、個人的には相対的により土方性を感じた。扉を開け放ち、中庭に出ると、二枚の畳を合わせて、そこに馬乗りするのだが、尻が脱げて、全裸になってしまうと、なんとなく、土方へのテンションが緩くなってしまった。土方に対峙するのは並大抵のことではない。なにより、テキストを朗読しただけで、その独特な「湿っぽさ」に心奪われて、結局土方の強さばかりが目立った時間だった。

2014/10/18(土)(木村覚)

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