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洋風画と泥絵 異国文化から生れた「工芸的絵画」

2020年08月01日号

会期:2020/06/09~2020/09/06

日本民藝館[東京都]

おもしろそうだな、いずれ行こうと思っていたら、来週から予約制になると聞いて早めに訪れる。初めはなぜ民藝館で洋風画を? と思ったが、創設者の柳宗悦は江戸時代の洋風画を「工芸的絵画」と呼び、民画に位置づけて収集したという。確かに舶来の異国風物を描いた洋風画には作者名がなく、工夫を凝らしてはいるものの妙な芸術的作為は感じられず、長崎港から得た西洋版画の模写を通じて、遠近法や陰影法を見よう見まねで学んだ成果が愚直に表われている。

ひとくちに洋風画といってもいろいろあって、技法別に見ると、ガラスの裏面に油性顔料で描いたガラス絵、安い顔料を使った泥絵、レンズと鏡越しに見ることで遠近感を強調する眼鏡絵など。モチーフ別だと、長崎港に停泊する外国船を描いた《阿蘭陀船図・唐船図》や《長崎港図》、オランダ人を描いた《紅毛人図》、外国の風景を想像で描いた《異国風景図》などがある。特に数が多い名所を描いた泥絵などは、土産物として安く売られていたらしい。そんなわけで柳が「民画」として位置づけるまで、芸術としての価値を認められず、絵画史からも取り残されていたのだ。レベルは違うけど、遠近法を強調してヴェネツィアの街並を描いたカナレットのヴェドゥータ(都市景観図)を思い出した。

2020/07/15(水)(村田真)

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