2020年09月15日号
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artscapeレビュー

ドレス・コード?─着る人たちのゲーム

2020年08月01日号

会期:2020/07/04~2020/08/30

東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]

もう十数年前になるが、当時、ライブドア代表取締役社長だったホリエモンこと堀江貴文が世間を騒がせ始めた頃、我々は何か得体の知れない違和感を彼に抱いた。それはあれほど日本の経済界を引っかき回し、時の人となったにもかかわらず、彼がつねにTシャツ姿だったからである。ビジネスの場ではスーツを着るものという常識、つまりドレス・コードが覆されたのだ。

本展を観て、ふと、そんなことを思い出した。服を選び、着るという行為を社会学的な視点でとらえた本展は、なかなか興味深い内容だった。スーツや学生服といった身分や属性を表わす服、従来の用途から離れてファッションアイテムとなった労働着や軍服、ファッションブランドによる挑戦的な問いかけ、映画や演劇、漫画などの創作物における服とキャラクターについて、森村泰昌や石内都、都築響一らの現代美術作品や写真など、テーマが実に幅広い。服とは、何よりも人間と社会とをつなぐ重要な媒介であるということを思い知らされた。

「ドレス・コード?—着る人たちのゲーム」展示風景[撮影:畠山直哉]

特に私の目を引いたのは、オランダ人写真家のハンス・エイケルブームによる大量のストリートスナップ「フォト・ノート 1992-2019」だ。ピンクのダウンジャケットを羽織った女性、デニムジャケットとジーンズ姿の男性、ザ・ローリング・ストーンズのTシャツを着た男性、同じショッピングバッグを持った女性など、ある特定のアイテムを身につけた人々をカテゴライズして集めた写真群で、こうして分析され示されると、世の中にはこんなにも似た格好の人々がいるのかと愕然とした。私も街行くなかで、気づかぬうちに何かにカテゴライズされたとしてもおかしくないのかもしれない。

ハンス・エイケルブーム《フォト・ノート 1992–2019》1992–2019 ©Hans Eijkelboom

また都築響一による一連の写真「ニッポンの洋服」も圧巻だった。「北九州市成人式」「極道ジャージ」「ジュリアナ・クイーン」「異色肌ギャル」など、ギョッとするほどディープな世界を独特の視点で切り抜く。エイケルブームの写真はどこにでもある風景だとすると、都築の写真はある特定の場所や場面に行かなければ見られない人々の姿である。彼らは自らの趣味嗜好を服装によって強く主張する。そう、服は自己を確認するアイデンティティーでもあるのだ。

「ドレス・コード?—着る人たちのゲーム」展示風景[撮影:畠山直哉]


公式サイト:https://www.operacity.jp/ag/exh232/
※来館には日時指定の予約が必要です。

2020/07/18(土)(杉江あこ)

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