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ヨコハマトリエンナーレ2020 AFTERGLOW─光の破片をつかまえる

2020年08月01日号

会期:2020/07/17~2020/10/11

横浜美術館、プロット48[神奈川県]

ヨコハマトリエンナーレの内覧会に足を運んだ。イヴァナ・フランケによってふさがれたファサードを抜けて、グランドギャラリーの大空間に入ると、ニック・ケイヴによる大量の庭飾りを吊るしたインスタレーションや、青野文昭の独自の修復を施した作品群が出迎える。訪れたタイミングでは、アトリウムの天井はすべて閉じられていて、だいぶ暗かったので、むしろトップライトの開口を開けた方がいいのにと思ったら、時間によって照明が変化し、やがて明るくなり、あえて光のコントロールをしていることを理解した。


イヴァナ・フランケによってふさがれたファサード



ニック・ケイヴ《回転する森》


実は「AFTERGLOW──光の破片をつかまえる」というテーマから、どんな内容になるのか、事前にはなかなか想像しにくかったが、いざ会場で見ると、なるほど、ベタにきらめく作品や部屋の照明から、蛍光シルクや半減期まで、さまざまなレヴェルで「残光」を感じさせる作品が、美術館に集まっている。本展のキーワードでは、毒との共生もうたい、コロナ禍の現状も受け入れる、おもしろいコンセプトだ。新館長の蔵屋美香による「いっしょに歩くヨコハマトリエンナーレ2020 ガイド」も楽しい。また常連の日本人作家が少なかったり、日本になじみがない外国人の作家が多く、横浜に居ながら、まるで海外で国際展を見ているかのようだった。


青野文昭の作品群



ジャン・シュウ・ジャンの新作インスタレーション

今回のヨコハマトリエンナーレは、3人組の芸術監督も海外作家も来日できないまま設営され、当初の予定を遅らせながら、なんとかオープンにこぎつけたが、おそらく現場は大変だっただろう。実際、今度の12月にスタートする予定だった札幌国際芸術祭2020は、新型コロナウイルスの影響によって中止が決定された。

なお、ヨコハマトリエンナーレのもうひとつの会場、プロット48では、美術館にあったような作品の説明がほとんどなく(間に合わなかったのか?)、既知の作家でもないことから、さすがに消化不良だった。会場に使われた建物は、旧横浜アンパンマンこどもミュージアムである。丹下健三の横浜美術館と同様、にぎやかな形態をもつポストモダンのデザインだ。それが整備されないままのややラフな状態の展示会場で行なわれており、興味深い空間の使い方だった。これまで倉庫やモダニズム建築のリノベーションをアートの展示で使うことは多かったが、そうではないタイプの空間の再利用は、今後ほかでも増えていくだろう。


第二会場・プロット48の外観



ファラー・アル・カシミの新作インスタレーション



ファーミング・アーキテクツの展示風景


公式サイト:https://www.yokohamatriennale.jp/2020/

2020/07/16(木)(五十嵐太郎)

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