2021年09月15日号
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artscapeレビュー

多摩川で/多摩川から、アートする

2009年12月01日号

会期:2009/09/19~2009/11/03

府中市美術館[東京都]

タイトルが示しているように、アートの現場としての多摩川をテーマとした企画展。中村宏らによる観光芸術研究所の「第1回観光芸術展」(1964年)をはじめ、高松次郎の《石と数字》(1969年)、山中信夫による《川を写したフィルムを川に写す》(1971年)、蔡國強の《Project for Extraterrestrials No.1: 人類の家》(1989年)などを振り返ることによって、作品を発表する場ないしは作品を制作する場としての多摩川をクローズアップした。絵画や写真、映像などバラエティに富んだ展示は見応えがあったが、会場を後にして思い至ったのは、作品を廃棄(焼却)する場としての多摩川が展示に含まれていないという重大な欠陥に加えて、そもそも多摩川に限らず現在の河川敷がはたしてどこまでアートの現場となりうるのかという大きな疑問だ。一日限りとはいえ、大きな看板絵を持ち込み、広い土地を展覧会場に見立てた「第一回観光芸術展」がとても現実とは思えないほど、現在の河川敷は徹底的に管理されている。だが、ほんとうに問題なのは、行政による管理の締めつけなどではなく、本来的に誰もが自由に使えるはずの河川敷という空間を表現の現場として活用しようと考えるアーティストが、遠藤一郎らによる「ふつう研究所」などわずかな例外を除いて、意外なほどに少ないという事実である。コマーシャル画廊や美大、そして美術館といった制度が期待されているほどには成熟できていない今こそ、河川敷という本質的に何もない荒野で自らの表現の強さを賭けるべきではないのだろうか。

2009/10/25(福住廉)

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