artscapeレビュー
群馬の美術 1941-2009
2009年12月01日号
会期:2009/09/19~2009/11/15
群馬県立近代美術館[群馬県]
戦後の群馬の美術の歩みを振り返る展覧会。戦前の1941年に結成された群馬美術協会にはじまり、県美術展の制度化、60年代半ばに「群馬アンデパンダン展」を開催していたNOMOグループ、74年に開館した群馬県立近代美術館など歴史的な時間軸を中心にしながら、日本画・洋画・立体・工芸・インスタレーションなど、さまざまな表現形式による作品160点あまりが展示されている。いわゆる団体展系の作品が多いことはたしかだが、それにしても福沢一郎や山口薫、鶴岡政男など、群馬に縁のある絵描きが多いことに驚かされる。なかでもひときわ際立っていたのが、おそらく出品作家のなかでもっとも若い、八木隆行の《B2プロジェクト 足尾》。小さな湯船を背負って山奥まで歩いていき、そこでお湯を沸かしてビールを呑みながら屋外での即席入浴を楽しむというプロジェクトだ。地形図に記された八木の足跡はストイックな求道者を連想させるが、じっさいの光景を写した写真を見ると、じつにのどかで楽しそうである。地方における美術の制作活動がますます困難を向かえている昨今、八木のプロジェクトは「地方でもひとりでも十分にやっていける」というたくましさを高らかにアピールしていたように見えた。
2009/11/10(福住廉)