artscapeレビュー
写真の現在・過去・未来─昭和から今日まで
2009年12月01日号
会期:2009/10/09~2009/10/28
横浜市民ギャラリー[神奈川県]
横浜開港150周年事業のひとつとして催された写真展。タイトルに示されているように、現在と過去と未来をそれぞれ振り分けて展示を構成することで、写真を貫く時間軸を浮き彫りにしようとしたようだ。じっさい、横浜市民ギャラリーと横浜美術館が所蔵するコレクションから選んだ「昭和の写真」、市民参加型のプロジェクト「未来に残したいヨコハマの風景」、そして池田昌紀、進藤万里子、原美樹子の3人のフォトグラファーによる「現代の写真表現」を順番に見ていくと、写真にまつわる直線的な時間の流れをじつに明快に理解することができる。けれども、大きな疑問だったのは、市民が撮影した写真を「未来」に位置づけていたこと。当然のように、横浜の代名詞ともいえる「山の手」を写した写真が大半を占め、結果的にどれも変わり映えのしない凡庸な展示になってしまっていたが、これはむしろ横浜の「現在」をテーマとしたほうが、よりバラエティに富んだ写真が集まっていたのではないだろうか。人工的で無機的、あるいは潔癖症的な「みなとみらい」と灰色の空気が立ち込める「寿町」のように、横浜の現在は両極端な街並みと人びとによって構成されているからだ。あらゆるアプローチによってリアリティを追求する写真が、その両端をおさえないで、はたして写真といえるのだろうか。
2009/10/28(福住廉)