2021年09月15日号
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artscapeレビュー

ラグジュアリー:ファッションの欲望

2009年12月01日号

会期:2009/10/31~2010/01/17

東京都現代美術館[東京都]

ファッションの展覧会。京都服飾文化財団のコレクションから選ばれた17世紀から現代までの作品およそ100点が展示された。「ラグジュアリー」とは「余剰から生み出された豊かさ」を意味しているらしいが、じっさいの展示はその言葉を見事に裏切り、到底ファッションの欲望を体現したものとは考えられない代物。マネキンに着せられた服飾の数々は、まるで博物館の倉庫からそのまま取り出してきたかのように、じつに貧相極まりなく、それらの服飾を身につけたいという欲望を喚起することもなければ、オブジェとして楽しめるものですらない。建築家の妹島和世がコム・デ・ギャルソンの服を見せるためにデザインしたという空間も、透明なアクリルを湾曲させながら衣服を囲むことによって、手に届きそうで届かない神聖性を引き出そうとしたのだろうが、完全なホワイトキューブならまだしも、冷たい石を連想させる巨大な空間では、その寒々しい灰色がアクリルに映りこむため、透明美が半減するばかりか、肝心の衣服がまったく美しく見えなかった。1999年に同館で催された「身体の夢:ファッションor見えないコルセット」展は、たとえばマルジェラの黴を生やしたジャケットを屋外に展示するなど、かなり挑戦的で厚みのある展示構成だったが、今回の展覧会は作品の量的にも質的にも、そして見せ方という点でも、10年前より明らかに退行しているといわざるを得ない。これが、ファッションと美術館をめぐる経済的状況のちがいに由来しているのか、あるいは基礎研究の衰退を意味しているのかは定かではないが、いずれにせよ人間の欲望を何かしらのかたちで刺激しないかぎり、アートだろうとファッションだろうと、人びとをひきつけることは到底かなわない。

2009/11/18(福住廉)

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