artscapeレビュー
田口行弘 個展「Über~performative sketch」
2009年12月01日号
会期:2009/10/06~2009/11/07
無人島プロダクション[東京都]
ベルリンを拠点に活動している田口行弘の個展。日々描き続けているドローイングの紙で壁を埋め尽くし、近年になって取り組み始めた映像作品を発表した。とりわけコマ撮りした写真を連続させて映像化したストップモーション・アニメーションが鮮烈な印象を残した。それらのドローイングが別の画廊の内部で変幻自在にかたちを変化させながら縦横無尽に動き回る様子は、じつに楽しい。また、これまた別の画廊の床板を剥ぎ取り、その長い板が群れを成して画廊内を練り歩き、ついには街へと飛び出して徘徊する映像を見ていると、モノとしての板がまさしく生物のように思えてくる。長い板といえば、斎藤義重から菅木志雄、そして川俣正にいたるまで、現代美術にとっては定番の素材だが、田口はそれらを組み合わせて空間を構築する段階から有機的に動かす段階に推し進めたといえるだろう。ただし、川俣が十八番とするような板を集結することによってその場の空間との生きた関係性を結ぶという側面は、残念ながら十分に成熟しているとは言いがたい。この点をクリアしたとき、田口の作品は大きな達成を果たすにちがいない。
2009/11/5(福住廉)