artscapeレビュー

2016年09月15日号のレビュー/プレビュー

椋本真理子 個展「リゾート」

会期:2016/07/30~2016/08/14

RISE GALLERY[東京都]

次、学芸大学から徒歩10分、ライズギャラリーへ。会場にはポップな色調に彩られた抽象的な彫刻やレリーフが並んでいる。これらはダムやリゾート地の一部をえぐりとり、なかば抽象化してFRPなどで立体化したもの。例えば凹凸面に緑、水平面に水色を塗った立体はダムの一部だとわかる。が、リゾートのほうは緑、赤、ピンクが混在するより抽象的な形態になっているので、一見わかりにくい。そもそもなぜダムとリゾートなのかといえば、どちらも自然環境を変えてしまう巨大な人工物だから。特にリゾート施設はダムみたいにあからさまに暴力的ではなく、自然に溶け込もうとしている点でいっそう悪質だと作者はいう。なるほど、だからわかりにくいのか。それだけ表現力が試されることになる。

2016/08/03(水)(村田真)

新世代への視点2016 水戸部七絵

会期:2016/07/26~2016/08/06

gallery21yo-j[東京都]

東横線沿線ギャラリーの3連発、最後は自由が丘から徒歩15分、坂を上った住宅街にあるギャラリー21yo-j。「新世代への視点」は銀座・京橋の画廊が毎年夏に開いてる企画展シリーズだが、ここは銀座から移転後も参加している。水戸部七絵は絵具をテンコ盛りにした作品で知られるが、今回も鉄製パネルに油絵具を山のように盛り上げた「絵」を出品。近ごろ絵具を色の道具としてではなく量塊として扱うアーティストが何人かいるが、ここまで盛り上げた作品は見たことがない。なにしろ小さめのもので厚さ10センチほど、大作では厚さというより高さ60センチくらいあるのだから。そのまま壁に垂直に掛けたら絵具がずり落ちてしまうので、斜めに掛けている。そのためかろうじて絵具が斜面に踏みとどまっている。と同時に、かろうじて彫刻ではなく「絵」であることに踏みとどまっている。ちなみに大作はグリーン系の絵具がこんもり盛り上がってるので山かと思ったら、人の顔だそうだ。なるほど横から見れば顔に見えないことはないし、もし山だったら真上から見た絵ということになってしまう。ほかの作品も人体や人の顔で、モチーフは一貫しているようだ。

2016/08/03(水)(村田真)

羽永光利アーカイブ展

会期:2016/07/23~2016/08/20

AOYAMA|MEGURO[東京都]

羽永光利(1933~1999)は東京・大塚生まれ。文化学院美術科卒業後、フォトグラムやデカルコマニー作品を発表していたが、1962年からフリーランスの写真家として活動し始めた。以後、雑誌等で仕事をしながら、現代美術、舞踏、演劇などの現場に密着して取材・撮影を続けた。1981~83年には、創刊されたばかりの「フォーカス」(新潮社)の企画・取材にかかわったこともあった。
アーティストたちのエネルギーが交錯しつつ、高揚していく時代の貴重な記録として、このところ、羽永の写真は国内外で大きな注目を集めつつある。昨年の「羽永光利による前衛芸術の"現場" 1964-1973」展に続いて東京・上目黒のAOYAMA|MEGUROで開催された今回の個展では、10万カットに及ぶという遺作から約450点が展示されていた。会場は「演劇」、「舞踏」、「世相」、「前衛芸術」の4部構成で、それぞれ1960~80年代撮影の写真がアトランダムに並んでいる。ハイレッドセンターやゼロ次元のパフォーマンスのドキュメントを含む「前衛美術」のパートや、土方巽、寺山修司、唐十郎などのビッグネームの姿が見える「演劇」、「舞踏」のパートもむろん面白いのだが、むしろこれまであまり発表されたことのないという「世相」のパートに注目した。「前衛芸術」の担い手たちの活動は、突然変異的に出現してきたわけではなく、それぞれの時代状況をベースにしてかたちを取ってきたことがよくわかるからだ。逆に1960~80年代の大衆社会の成立がもたらした解放感、エネルギーの噴出こそが、「前衛芸術」の活況を支えていたともいえるだろう。写真に引きつけていえば、中平卓馬、森山大道、荒木経惟、深瀬昌久らの「ラディカル」な表現のあり方は、羽永の写真に見事に写り込んでいる「世相」のエスカレートぶりと響きあっているようにも思えるのだ。
なお、羽永のアーカイブが所蔵する写真1000枚を収録した文庫版写真集『羽永光利 一○〇〇』(編集・構成、松本弦人)の刊行が決定したという。内容と装丁とがぴったり合っているので、出来映えが楽しみだ。

2016/08/04(飯沢耕太郎)

ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~

会期:2016/07/24~2016/08/21

本多劇場[東京都]

KERAと古田新太が組んだ「ヒトラー、最後の20000年」を観劇。政治的な風刺というより、いやユダヤ人のネタを含めて、あまりに不謹慎でさえあるが、内容を説明しようにも、最初から最後まであまりに支離滅裂で、サブタイトルが示唆するように「ほとんど、何もない」。が、最後まで飽きさせず、笑いを誘う破壊力を放つ。見事な演技と脚本である。演劇でしか表現できない間の絶妙さも鍵なのだろう。

2016/08/04(木)(五十嵐太郎)

The NINJA ─忍者ってナンジャ!?─

会期:2016/07/02~2016/10/10

日本科学未来館[東京都]

春の「ゲーム」展に続いて、中1の息子と「忍者」展を見に行く。息子はゲームも好きだが、なぜか忍者とかマジックとか大道芸も好きだ。まあだいたいこの年代の男子はチョロいからトリッキーなものに飛びつくもんだ。まず忍者関連のマンガや小説が並ぶ「忍者研究室」を抜けると、メイン会場は「体をきたえよ」「技をきわめよ」「心をみがけ」の3つのステージに分かれている。「体」では、植物の成長にしたがってより高く跳べるようになる「ヒマワリ跳び越え」をはじめ、手裏剣打ちや忍び足を体験。「技」ではさまざまな忍者道具や武器、食料、薬などを紹介。「心」では巨大スクリーンのナンジャ大滝の前で修業するとなにかが起きる、という趣向。かなりゆるいが、いちおう「科学」と名のつく施設なのでいいかげんなことはしていない。最後は忍者認定証をもらって、ショップでレトルトの「忍者カレー」を買って帰った。

2016/08/04(木)(村田真)

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