artscapeレビュー

2016年09月15日号のレビュー/プレビュー

《直島パヴィリオン》ほか

[香川県]

直島へ。宮浦港に船で到着すると、草間彌生の《赤かぼちゃ》と同様、藤本壮介による《直島パヴィリオン》がすぐに目に入る。町制施行60周年記念事業でつくられたものだ。浮島現象をイメージしつつ、ステンレス製の網で多面体の籠のような場がつくられ、内部に入ることもできる藤本らしい建築的なオブジェである。

2016/08/13(土)(五十嵐太郎)

「直島建築+The Naoshima Plan」直島建築ツアー

[香川県]

直島建築ツアーに参加する。ベネッセとしては初めての試みらしい。石井和紘が設計した文教地区の幼児学園、保育園、中学校、体育館、小学校、和洋折衷の役場、そして三分一博志による《直島ホール》、リノベーション住宅の《またべえ》を見学した。初めて内部に入ることができる物件があり、貴重な体験だった。1970年代の石井建築の計画学的なプログラム、空間の構成、完全な記号引用型のポストモダンになる前の複雑なデザイン操作など、もっと再評価されてよいと思う。三分一博志はいずれも風や水の建築である。役場のすぐ隣の《直島ホール》は、記号ではない大屋根とその下に広がる大空間が、見たことがない雰囲気を生み出す。集会所も大屋根の下に、屋根をもつ分棟の間を風が吹く。《またべえ》は美しい苔のある庭も忘れがたいが、夏冬の変化に応じて着脱しながら、環境を調整する。

写真:左上=《直島中学校》武道館 左中=《直島中学校》校舎 左下=《直島町役場》 右上=《直島小学校》 右中=《直島ホール(直島町民会館)》 右下、《直島の家 ─またべえ─》

2016/08/13(土)(五十嵐太郎)

「直島建築+The Naoshima Plan」ギャラリートーク

旧青木衣料品店、直島ホール[香川県]

瀬戸内国際芸術祭にあわせて開催された「直島建築」展と「The Naoshima Plan」展のギャラリートークに参加する。前者は石井和紘、安藤忠雄、SANAA、三分一博志と受け継がれる、約半世紀の建築の歩みを当時の図面、写真、島の模型などで振り返る。後者は三分一による直島の風環境リサーチをもとにした地域に根づく建築のあり方を紹介したものだ。

2016/08/13(土)(五十嵐太郎)

開発好明:中2病展

会期:2016/07/16~2016/09/19

市原湖畔美術館[千葉県]

某女子大の教え子3人と千葉県の高滝湖畔にピクニック。東京駅から高速バスで市原鶴舞に出て、路線バスに乗り換えて湖畔美術館へ。ここは2年前の「中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス」の拠点になったところ。そのとき《モグラTV》で人気を博したアーティスト、開発好明の個展が開かれている。タイトルの「中2病」とは、性や自我や社会意識に目覚める思春期特有の背伸びしがちな言動を自虐的にいう造語で、そういえばぼくも中2のころっていちばん思い出したくない時代だったなあ。同展は日替わりのイベントやサービスがあり、今日は中学生の格好をしていけば入場無料になるというので、制服姿で来るように指示したら、みんな本当にセーラー服とかで来たのでタダで入れた。ちなみにぼくも黒いズボンに白いシャツ姿。全員で写真を撮られ、どこかにアップされた模様。
会場には巨大なポロック柄シャツやビュレン柄パンツ(まるでカーテン)、校長の顔写真に落書きした《らくがお校長先生》、墨が塗られた文章を想像で復元する《黒塗りテスト》など、おもに学校ネタの新旧インスタレーション約50点が並ぶ。来場1万人目の人にはグァム旅行が当たる! というサービスもあるが、会期なかばにして1,530人ほど。1万人にはほど遠い(もちろん1万人も入らない前提での企画だが、万一入ったら嬉しい誤算)。どの作品もポップでダサくて手づくり感にあふれ、幾何学的でオシャレな美術館に対する批評になっている。それは館外の作品により顕著で、エントランス前には竹を舟形に組んだインスタレーションの下に洗濯機が置いてあり、洗濯物が干してある。これは《洗濯船》という作品で、自由に服を洗っていいというが、だれがこんなとこで服を脱いで洗濯するか。ちなみに「洗濯船」とは、ピカソやモディリアーニがアトリエを構えていたというパリの伝説的な安アパート「バトー・ラヴォワール」のこと。前庭にはやはり角材を組んでハンガーを吊るした《青空クローク》が設置されてるが、だれがこんなとこに服や荷物を預けるか。これらは夏休みにピクニックがてら美術館を訪れるスノッブなプチブルへの強烈な批判であろう。いやー痛快っつーか。帰りは再び高速バスで東京駅に出て、近くの飲み屋に入ったら年齢を確認された。そうだ、みんな中学生の格好してたんだ!

2016/08/13(土)(村田真)

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豊島

[香川県]

豊島へ。イオベット&ポンズの《マルチ・バスケットボール》、周囲の家屋群にもある庇を拡大した島キッチン、青木野枝の自然に溶け込む屋外彫刻、ピピロッティ・リストの映像、レーベルガーの大胆なグラフィックによる内装、横尾忠則+永山祐子のガラスで分割した家屋など、いくつかのサイトを再訪する。ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーの《ストーム・ハウス》は、外は晴天にもかかわらず、室内に入ると窓越しに雨や雷を体験し、窓学的にはマグリットの絵と近い。
新作としては、大竹伸朗の《針工場》が、シンプルながらモノの存在感が強い。ガラス窓だけを残して、スケルトンにした工場の棟を支える裏返しにされた漁船の大きな木型が異彩を放つ。スプツニ子!+成瀬猪熊の《豊島八百万ラボ》は、斜めに鉄骨梁を挿入した古民家の内外で、PV的な科学とアートの融合+神道的な雰囲気を演出する。

写真:左上=レーベルガー 左下=永山祐子 右上=スプツニ子

2016/08/14(日)(五十嵐太郎)

2016年09月15日号の
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