2022年12月01日号
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artscapeレビュー

2009年07月01日号のレビュー/プレビュー

水墨画の輝き──雪舟・等伯から鉄斎まで

会期:2009/04/25~2009/05/31

出光美術館[東京都]

雪舟から等伯、宗達、光琳、玉堂、鉄斎まで、水墨画の錚々たる描き手たちをそろえた展覧会。ここ最近立て続けに催された水墨画の展覧会のなかでは、質的にも量的にも突出して充実した内容だった。色彩を放棄した水墨画であるにもかかわらず、いずれの作品も光り輝いているように見えたから、タイトルに偽りはない。

2009/05/28(木)(福住廉)

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三喜徹雄『ネコノジカン』

会期:2009/05/16~2009/05/31

湘南くじら館[神奈川県]

1967年の結成以来、関西を中心に活動している前衛美術集団「THE PLAY」。本展は、その主要メンバーのひとりである三喜徹雄による個展。ブリキやアルミの廃材をもとに動物のかたちに加工したオブジェや、海岸で集めた流木を組み合わせたオブジェの写真、「THE PLAY」のハプニングスで用いた木彫りのカヌーを輪切りにして作ったベンチなどを発表した。いずれの作品にも通底しているのは、目前の素材を別のかたちに作り変えるという単純明快な原則。廃材利用はもちろん、海岸のオブジェも巨大な流木を細い木々で支えながら持ち上げたもので、木彫りのカヌーにいたっては美術館で保存されるに値する「作品」をぶった切ってベンチにしてしまうありさまだ。「作品」に商業的ないしは歴史的な価値を付加するのが自明視されている昨今だからこそ、こうした原則をいまだに忠実に実践している美術家は今以上に評価されるべきではないだろうか。なぜなら、私たちの心を大きく揺さぶるのは、商品と見分けがつかないアートワークなどではなく、この原則をただひたすら追求することに没頭するアーティストの潔い姿勢にほかならないからだ。美術家にとってのエートス(心意気)をまざまざと見せつけられた気がした。

2009/05/29(金)(福住廉)

小沢さかえ個展「珠玉のポエジー 」

会期:2009/05/30~2009/07/05

MORI YU GALLERY KYOTO[京都府]

京都在住ながら東京での発表が続いていた小沢。ようやくその世界を直に見ることができた。現実と非現実、夢や妄想、具象と抽象などが混在する作品は、彼女の頭の中のイメージを素直にトレースしたものなのか? 胸の内にある大切な何かを見つけたような、ほのかに温かい気持ちになるが、同時に絶望的な孤独を感じたりもする。技量とオリジナリティを兼ね備えた画家であることがわかったので、今後も作品を見続けたい。なお、彼女は来年1月に国立国際美術館で開催される
「日本の現代絵画」(仮称)への参加が決定している。

2009/05/31(日)(小吹隆文)

関口正浩「うまく見れない」

会期:2009/05/30~2009/07/11

児玉画廊[京都府]

一見、色面を塗り重ねた抽象絵画。よく見ると表面がぬるっとした感触で、あちこちに皺がある。ビニール系のシートに絵具を塗ってコラージュしているのかもしれない。そう思ってギャラリーのスタッフに尋ねると、思いがけない答えが返ってきた。自作の樹脂製の板の上に油絵具を流し、生乾きの状態で引き上げ湯葉よろしく剥がしてキャンバスに貼り付けているのだ。絵具の生々しい質感が印象的で、見る者の生理に訴えてくるような存在感がある。この特徴をより鮮明にして行けば、独自の存在になれるかもしれない。

2009/06/02(火)(小吹隆文)

別府現代芸術フェスティバル2009 混浴温泉世界

会期:2009/04/11~2009/06/14

別府市内各所[大分県]

ジャンル:美術、パフォーマンス、その他
会期終了目前に訪れ、1日だけ流すように会場巡りした私に、このアートフェス全体を語る資格はない。が、遠方から訪れた身で実感したのは、アートだけを目的に別府を訪れるのはもったいないということ。温泉やグルメ、観光と組み合わせ、連泊して別府の街を味わい尽くすことで、初めて語れる催しなのだろう(主催者の目論みもそこだろうし)。作品で印象深かったのは、レトロな市街地の空気と絶妙にマッチしていたチャン・ヨンヘ重工業の映像作品と、犬、鶏、鼠、蛇、サソリなどをひとつの空間に放ち、阿鼻叫喚の戦闘シーンを記録したアデル・アブデスメッドの映像作品。特に後者は動物愛護団体が見たら卒倒ものだが、「混浴温泉世界」の理念と現在の国際情勢を象徴的に表わしており、短時間の作品ながら大変インパクトがあった。

2009/06/06(土)(小吹隆文)

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