2019年10月15日号
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artscapeレビュー

竹原あき子『縞のミステリー』

2011年08月01日号

著者:竹原あき子
発行日:2011年6月
発行:光人社
価格:2,310円
サイズ:222ページ

工業デザイナー・竹原あき子氏の近著『縞のミステリー』は、時空を自由に行き来しながら縦横無尽に、「縞」の本性と歴史について語り尽くす。いまや日常で見慣れた「ストライプ」は、かつてエキゾティックなものだった。桃山時代に、南蛮貿易でインドや東南アジアから輸入された木綿の縞織物は「サントメ」と呼ばれて日本人に好まれ、やがては「唐桟(とうざん)」として日本各地で生産されるようになった。冒頭の舞台はそのインド南東部のマドラスだ。それから、産業・デザイン・歴史をとおして縞文様をめぐる旅が始まる。ヨーロッパとアジア、さらにはアフリカ・イスラムと「日本の縞」はどのように異なり、この国の歴代で愛し育てられ変貌を遂げてきたのか。「一瞬にして際立つ縞、コントラストのある縞の魔的な力は、見えないものを見えるものにし、この人物は普通でないと社会に差し出す。パストゥローの『悪魔の布』は、そんな縞の悪魔的な性格を強調してやまなかった。だがヨーロッパの外では縞に反社会的な意味はなかった」と著者は語りつつ、「日本の縞は、スキャンダルでもなければ、悪魔の布でもない。だが九鬼周造が語るように縞は、日本人にとって粋の極致だったのだろうか」と問いを投げ掛ける。縞文様とはロマンだ。文様は──それが幾何学的な文様であれ──物語を、私たちの住む世界がいかにして築かれてきたかについて密やかに語る。本書を読めば、著者の眼を通じて、日常にいながらにして世界中を訪れた気分になれる。[竹内有子]

2011/07/02(土)(SYNK)

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