artscapeレビュー
ジャケット・デザイン50-70's──ジャケットでめぐる昭和
2011年08月01日号
会期:2011/05/21~2011/07/18
芦屋市立美術博物館[兵庫県]
本展は、ラジオ関西が所有する1950-70年代のレコード・ジャケット(海外アーティストのみ)を展覧したもの。会場には音楽が流れ、約200点におよぶ戦後以降のLP盤ジャケットを一堂に見ることができるから、そのときに青春時代を送った人々は、特に楽しめるだろう。が、いささかフラストレーションが残る感じは否めない。「ジャケット・デザイン」の「なににスポットを当てたいのか」という主催者の意図がはっきりしないからだ。副題にあるように日本における昭和の文化を浮かび上がらせたいのか、またはジャケットの芸術性を問題にしたいのか、あるいは同時代における西欧の社会的・文化的表象としての「デザイン」なのか? とはいえ展示品の中には、興味深いジャケットのデザインがいくつかあった。ビートルズの初期盤に見られるようなポートレイト的・没個性的な表現から、《サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド》(デザイン=ピーター・ブレイクとジャン・ハワース、1967)のサイケデリックで個性的なジャケットへの変遷。また、ローリング・ストーンズの《スティッキー・フィンガーズ》(1971)では、アンディ・ウォーホルがジャケットに実物の「ジッパー」を取り付けるという斬新なデザインを試みている。そのほか、横尾忠則が手掛けたサンタナの《ロータスの伝説》(1974)など。これらに関しては、ポップ・アート/ポップ・デザインの文脈や、若者文化などに関する社会文化的視点を加えた詳しい解説パネルを付せば、観者の理解がより増すだろう。指定管理者の問題以降、館の運営に試行錯誤が続く芦屋市立美術博物館。今後の展覧会活動の充実に期待を寄せつつ、応援をしてゆきたい。[竹内有子]
2011/07/03(日)(SYNK)