2019年10月15日号
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artscapeレビュー

明・清陶磁の名品──官窯の洗練、民窯の創造

2011年08月01日号

会期:2011/06/28~2011/09/04

出光美術館(東京本館)[東京都]

出光の中国陶磁コレクションのなかから、明から清にかけての陶磁の名品を展観する。展示はおおむね時代を追いつつ四つのパートに分かれている。最初は「明朝前期の官窯」。洪武から正徳までの官窯の作品。つづいて、清朝官窯の粉彩による絵画的な磁器の数々。三つめのパートでは明清の民窯と官窯を対比する。最後に景徳鎮以外の地方窯の特色ある作品を紹介する。出光の清朝磁器は、戦後比較的新しく形成されたコレクションであり、その内容は鑑賞陶器、すなわち純粋な鑑賞を目的とする考えで収集されたものであるという。そのために、茶道や文人趣味の審美眼による蒐集品とは異なり、むしろ中国陶磁器の本流が蒐集されることになったという。
展示のなかでも目を惹かれたのは、景徳鎮官窯「大清乾隆年製」銘(1736-95)がある茶葉末(ちゃようまつ)釉の器である。同じ様式のものが3組4点出品されているが、渋い深緑色の釉薬の美しさとあわせて、器形の抽象化のされかたがたいへんにモダンなのだ。とくに象の頭をかたどった耳がついたシンプルな方形の器。両側面の象の鼻が環を下げているのだが、その環は独立した実用的なものではなく、象の頭とともに器の表面に浅く浮き彫りにされた、高度に様式化されたデザインなのである。単色の釉のみで、絵付けはない。他の展示品にみられる絵付けを中心とした装飾とは明らかに異質で、さながらアールデコの器のようである。この時代、だれがどのような用途にこの器を求めたのであろうか。この様式はどのように評価されていたのであろうか。また後の様式にどのように影響を与えたのであろうか。たいへん気になる作品である。[新川徳彦]

2011/07/13(水)(SYNK)

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