2019年10月15日号
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artscapeレビュー

吉行耕平 The Park

2011年08月01日号

会期:2011/06/29~2011/07/18

BLD GALLERY[東京都]

これはおもしろい。赤外線フィルムで夜の公園の模様を撮影した写真で、カップルによる愛の行為や、それを覗き見る男性の群れ、さらには男性同士が戯れる光景を映し出している。いずれも背後から撮影しているが、おもしろいのは徐々に被写体との距離が近づいてゆき、やがて至近距離まで接近するところだ。カメラマンとしての客観的な立ち位置が、いつのまにか覗き見集団の一員にまでポジショニングを移動させていくといってもいい。ここにあるのは、外部の視点をもって内部に潜入するフィールドワーカーが直面しがちな、対象と同一化する寸前で辛うじて身を引き離す、独特の緊張感だ。それは、たとえば石川真生や森山新子の写真にも通じる特質だが、これらの写真家に共通するのは撮影の方法論だけではない。それ以上に、「ルポルタージュ」というより「体当たり」という言葉がふさわしい手法による写真そのものに、肉体の手触りや温もりが感じられるというところに大きな特徴があるのだ。これは、無機質な光と色彩によって代表される昨今の写真にはほとんど見受けられないアナクロニズムなのかもしれないが、かりにそうだとしても擁護しなければならないのはこちらのほうだ。なぜなら、肉体が内側から破壊される潜在的脅威を多くの人びとが抱えてしまった今、実在の根拠としての肉体に、これまで以上に関心が集まっているからだ。

2011/06/30(木)(福住廉)

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