2020年07月01日号
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artscapeレビュー

近代洋画の開拓者 高橋由一 展

2012年10月01日号

会期:2012/09/07~2012/10/21

京都国立近代美術館[京都府]

高橋由一の作品のなかで、私が一番好きなのは豆腐の絵だ。最初は実物ではなく雑誌の画像で知ったのだが、その際の驚きはいまでも鮮明に覚えている。「なんだこの変てこりんな絵は」「油絵で豆腐を書いてどうするんだ」。正直に告白すると、当時の私は彼の作品をキワモノ扱いしていたのだ。その後何年かが経ち、香川県の金刀比羅宮で実物の《豆腐》を見ることができた。由一独特のごつごつした質感表現で描かれた豆腐には並々ならぬ存在感があり、彼が目指していたリアルと現代のわれわれのリアルには触覚と視覚ほどの違いがあることにやっと気付いた次第だ。本展では、《鮭》や《花魁》などの代表作はもちろん、道路改修を記念した画帖や油絵以前に幕府の開成所で描いていた動植物の図譜が見られたことが収穫だった。また、記者発表時に学芸員が話した「由一は侍だったので、絵で藩や国に仕えようとしたのではないか」との指摘も作品理解に役立った。本展により、私のなかの高橋由一像が、ほんの少しだが明瞭になったように思う。

2012/09/06(木)(小吹隆文)

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