2020年07月01日号
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artscapeレビュー

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012

2012年10月01日号

会期:2012/07/29~2012/09/17

十日町市、津南町一帯[新潟県]

5回目を迎えた妻有のトリエンナーレ。海外の著名なアーティストを招聘することより、地域に入り込んで持続的な表現活動に取り組むアーティストを重視しつつあることや、芸術祭のなかで特定のテーマに絞った展覧会を開催するなど、ここ数年で成熟期に入ったように見受けられる。ボルタンスキーの《最後の教室》やタレルの《光の家》、日大芸術学部彫刻コース有志による《脱皮する家》など、定番の作品が充実してきたことも大きい。
今回の見どころとしては、まずボルタンスキーの《No Man’s Land》が挙げられるが、古着の物量は確かにすさまじいものの、それらが集積した山を枠組みで底上げしているのが見え見えで、いくぶん感動が薄れてしまったことは否めない。とはいえ、夕闇のなかで乗降を繰り返すクレーンの姿は、ラウル・セルヴェのアニメーションのようで、非常に印象的だった。
新鮮な感動を覚えたのは、リクリット・ティーラヴァニットの《カレーノーカレー》。カレーで国際的なアートシーンに登り詰めたアーティストとして知られているが、正直その味にはさほど期待していなかった。ところがタイカレーをベースに、妻有の食材をふんだんに取り入れたカレーは、ほっぺたが落ちるほどのうまさ。地の野菜を使ったピクルスを開発するなど、スタッフの献身的な働きも手伝って、みごとな料理に仕上がっていて驚いた。これはもはや作家本人というより、むしろ実働するスタッフの作品として評価したい。
さらに、土をテーマとした《もぐらの館》も、大変クオリティの高い展覧会だった。閉校した小学校を会場に、美術家と左官職人、陶芸家、写真家、土壌研究者による作品が展示されたが、全体のテーマが非常に明快なうえ、それぞれの空間が巧みにメリハリをつけられており、土の質感や色、成分、働きなどについて楽しみながら体感することができた。これは、本展を企画した坂井基樹の手腕によるところが大きいのだろう。
「カレー」と「土」に共通しているのは、いずれもそのおもしろさがアーティストの手から遠く離れたところで生まれているということだ。これをアーティストの役割の退化と考えるのか、それともアートそのものの進化ととらえるのか。世界でも類例が見られない地域型の国際展は、なかなかおもしろい展開をしている。

2012/09/17(月)(福住廉)

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