artscapeレビュー

国立動物園を考える

2012年10月01日号

会期:2012/09/09

東京大学弥生講堂 一条ホール[東京都]

文字どおり「国立動物園」の設立に向けて議論するシンポジウム。国立動物園を考える会の会長の小菅正夫のほか、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆、東京大学の木下直之がそれぞれ口頭発表した後、到津の森公園園長の岩崎俊郎による司会のもと、登壇者全員で討議した。とりわけ後半の全体討議を聞いていて気がついたのは、動物園が抱える問題と美術館が抱えるそれが、きわめて対照的な関係にあるということ。つまり、毎年4,000万人もの人びとが訪れる動物園は、大衆的な人気と必要性をすでに獲得しているにもかかわらず、国レベルでの支援がほとんど望めない反面、歴史的に文化行政から厚遇されてきた美術館は今になってようやく大衆化に躍起になっている。動物園が当初から地域に根づき、これから地域を超えた総合化に取り組もうしている一方、美の普遍性を標榜してきた美術館は逆に地域社会に何とかして関与しようとしている。双方のあいだには、ちようど真逆のベクトルが行き交っているわけだ。であれば、いっそのこと、「国立美術動物園」という混合施設の可能性を検討してみてもおもしろいだろう。

2012/09/09(日)(福住廉)

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