2020年09月15日号
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artscapeレビュー

ほうほう堂「ほうほう堂@おつかい」

2013年10月01日号

会期:2013/09/21~2013/09/22

あいちトリエンナーレ2013会場ほか[愛知県]

ぼくはこの公演を上演の現場ではなくiPhoneの画面で見た。あいちトリエンナーレ2013の委嘱作品である本作は、長者町を中心に、栄の街をあちこちと移動しながら踊るという一風変わった公演で、肉眼でつぶさにパフォーマンスを逐一追うという鑑賞スタイルは不可能。その分、パブリックビューイング、踊る場で待ち構える、Ustream中継で見る、という3種類の鑑賞があらかじめ用意されていた。ダンスの作品発表は舞台公演の形式をとらなくてもよいのではとぼくはかねてから思っていたので、今回の上演には未来を先取りするところがあると期待していた。舞台公演というのは、時間のみならず場所も制限しており、この二重の制限は、ネットが浸透した時代にあまりにも不自由ではないか。肉体表現はライブでなければならないというもっともらしい考えも、本当に検討するべき課題を先送りするための言い訳になっていはいないか。新作をYouTubeで公表する作家がいてもいいのだ。そう、例えば、ほうほう堂はすでに3年ほど前から、戸外のあちこちに繰り出して踊り、それを映像に収めてYouTubeに投稿してきた先駆者だ。今回の上演は、そうした活動の集大成だという。ぼくは、上演予定の15時30分にはまだ家族と江ノ島で遊んだ帰り道で、街中にいた。そんなルーズさでも鑑賞体験が成立すると言うことに、まずは痛快さを感じた。さて、放送を見ると、和菓子屋のCMが始まっていた。会場から会場へと移動するあいだなどにも用いられたこのCM。「おつかい」がテーマであることともあいまって、栄周辺がどんな街で、どんな歴史・伝統を宿しているのか、現在の課題はなんなのかを、このCMは伝えてくれる。このCMという仕組みがとくにそう思わせるのだが、この上演は放送が前提になっていたのは驚きだ。ほうほう堂は、CMがフォローした場所を含め、県庁舎や長者町の倉庫、喫茶店、花屋、ビルの屋上などで踊った。彼女たちの踊りは、ミニマルな動きを反復したり、ユニゾンしたり、2人でずらしたり、シンプルで短いフレーズの連続する様が特徴。それは映像化したときに、ちょっとした武器になる。スローモーな動きとか、見る者に緊張を強いる動作だと、映像では伝わりにくい。しかも、まだネット中継の基盤が整っていない現状では、しばしば映像の中断が起こるので、一層、数秒でまとまったニュアンスが伝わる振付のほうがよいのだ。彼女たちの気負いのない、気取りのない、些細だけれど、フレンドリーなダンスは、観客と現場とを上手くつなぎ合わせ、結び合わせる糸の役割をはたしていた。ただ、その糸にもっと独特さを感じさせる「よれ」があってもよいのでは、とも思ってしまった。CMなどとくにそうなのだが、彼女たちの眼差しが特にどこにこだわり、どこに「あいち」の潜在的な力を見いだしたのか、そこにハッとさせられる点があってもよかったのではないか。とはいえ、個性のごり押しで作品が小さくなるよりはよいのかも知れない。ほうほう堂が進めたこの一歩から、どんなネクストが起こるのか? コンテンポラリー・ダンスの未来はこのあたりに鍵があるような気がしてならない。

『ほうほう堂@おつかい』あいちトリエンナーレ2013 ダイジェスト映像

2013/09/22(日)(木村覚)

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