2020年09月15日号
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artscapeレビュー

和田昌宏 個展 RECORRIDO ARQUEOLOGICO #1

2013年10月01日号

会期:2013/08/14~2013/09/01

Art Center Ongoing[東京都]

気鋭のアーティストとして注目を集めている和田昌宏の個展。アーティスト・イン・レジデンスによって滞在したメキシコでの体験をもとにした映像作品を発表した。アート系の映像というより、むしろちょっとした物語映画のような完成度を誇る、すばらしい作品である。
映像は、和田自身がメキシコに滞在中に襲われた原因不明の体調不良に始まり、次いでその折に夢に出てきた謎の建築物の意味を解明するために祈祷師や分析医を訪ね歩いていくという設定だ。随所に、メキシコ滞在中に撮影されたスナップ写真を差し込むなど、巧みな編集によって鑑賞者をぐいぐいと映像のなかに引き込んでいく。和田が夢のなかで謎の建築物にとりつかれたように、その映像を見る私たちもまた和田の映像に巻き込まれていくようだった。
しかし、翻って和田がメキシコで何をしたのかをよくよく考えてみると、要は現地でダウンし、その後徐々に回復したとはいえ、レジデンスの成果をメキシコで発表したわけでもなく、街中でおもしろい写真を撮影しただけである。今回発表された映像作品は、言ってみれば事後的に編集した物語にすぎない。現地での交流や発表を求めるアーティスト・イン・レジデンス事業の基準からすれば、とても満足できる内容ではないはずだ。
しかし、だからこそ、和田昌宏の力業を評価したい。たとえ祈祷師の預言が出鱈目であったとしても、あるいは体調不良という出発点すら事実ではなかったとしても、それらを清濁併せ呑みながら、すべてをひっくるめて、いかにも真実として仕立て上げることが芸術の役割だったからだ。アートとは、いや、アーティストとは、本来的にそのような職能なのだ。

2013/09/01(日)(福住廉)

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