2020年09月15日号
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artscapeレビュー

花開く江戸の園芸

2013年10月01日号

会期:2013/07/30~2013/09/01

江戸東京博物館[東京都]

江戸時代のガーデニングを紹介する展覧会。園芸を楽しむ人びとやその光景を描いた浮世絵や屏風絵、摺物のほか、関連する資料などが展示された。
石によって構築されたヨーロッパの都市に比べて、木によって構成された江戸には、かねてから緑が豊富だったことはよく知られている。本展を見ると、植物を愛でる文化が当時から盛んだったことがよくわかる。
江戸の園芸文化を爆発的に広げたのが、植木鉢の普及である。これにより栽培と販売の両面にわたって植物は人びとの日常生活の隅々にまで行き渡った。四季に応じて色とりどりの草花を楽しむ営みが江戸の風物詩になったのである。
ただ、この園芸文化の起源が植木鉢に求められることは事実だとしても、より正確に言えば、それは植木鉢が設置される空間、すなわち路地である。もともと狭い路地に、それでもなおおびただしいほどの植木鉢を並べることで、たんに機能的な路を色鮮やかに装飾したのだ。これはすぐれて美学的な問題であることは明らかだ。
たとえばジェントリフィケーションの渦中にある下町では、旧住民の植木鉢が交通の障害になるとして、新住民がその排除を訴えることが多いと聞く。しかし、本展で詳らかにされていたように、これまでも生活と園芸は分かち難く結ばれていたし、それゆえ路地と植木鉢は決して切り離すことはできない。このことを理解できない新住民こそ、草花の美しさやそれらを愛でる感性を磨くべきだろう。

2013/08/31(土)(福住廉)

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