artscapeレビュー
雲の向こうに
2015年04月15日号
会期:2015/01/11~2015/03/29
越後妻有里山現代美術館キナーレ[新潟県]
京都の翌日は新潟へ。交通費がバカにならない。上越新幹線で越後湯沢に出てほくほく線に乗り換えると、あきらかに鉄ちゃんとおぼしき人たちが車両の前に陣取り、いつもはだれも降りないトンネル駅の美佐島でゾロゾロ降りていく。そうか、もうすぐ北陸新幹線が開通してほくほく線の特急が廃止されるため、トンネル内を走る特急をカメラに収める最後のチャンスなんだな。しかし特急が廃止されると利用客が激減し、ほくほく線もホクホク顏ではいられまい。なーんてね。十日町の現代美術館キナーレでは冬の企画展として、小松宏誠、KOSUGE1-16、谷山恭子、長谷川仁、林剛人丸が常設展示の隙間で新作を発表している。谷山は会場に林立する木に虹色の布を巻き、その前に新潟県ゆかりの文学者の本を置いて自由に読めるようにした。ページをめくると、色に関する記述がある部分にラインが引かれている。谷山は冬の新潟をモノクロームの世界と捉え、来場者に少しでも色彩を感じてもらうためにプランを練ったという。一方、長谷川は会場の一画に赤いバラの花びらを散りばめた部屋をつくり、中央に太いチューブを設置。そこに受付でもらった花びらを入れるとシュッと吸い込んでいく。あれっと思う間もなく窓の上から花びらがひらひら舞い落ちていくのが見えるという仕掛け。と言葉で書く以上にインパクトがあるのは、赤い色のせいだろうか。どちらも色彩を意識した作品だが、谷山がジワリと染み入るのに対し、長谷川は強烈なカウンターパンチだ。
2015/03/07(土)(村田真)