artscapeレビュー
グエルチーノ展──よみがえるバロックの画家
2015年04月15日号
会期:2015/03/03~2015/05/31
国立西洋美術館[東京都]
たぶん美術史に詳しい人でなければグエルチーノの名前は知らないだろうけど、作品を見れば「ああ、西洋の美術館でウンザリするほど見かける宗教画」と思うはず。それほどグエルチーノ的な絵柄は広く出回ってるわけだが、グエルチーノ本人はキラ星ひしめくイタリア・バロックにおいて「その他多数」のひとりでしかない。もちろんそれは日本での見方であって、イタリア(とくに故郷のチェント)では偉大な画家として尊敬されており、ゲーテにいわせれば「グエルチーノといえば神聖な名前」だそうだ。本展にはグエルチーノだけでなく、師匠のルドヴィコ・カラッチやライバルのグイド・レーニら同時代の画家の作品も出品されているが、大半は聖母子、聖ヨハネ、聖フランチェスコ、聖カルロ・ボッロメーオなどの聖人を芝居がかったポーズで描いた宗教画。まさに日本人がイメージする西洋絵画の典型だろう。しかしなんでわざわざ知名度の低いグエルチーノの展覧会を開くのか。理由のひとつは、本展にも出品されてる《ゴリアテの首を持つダヴィデ》が国立西洋美術館の所蔵だからという縁だ。でもそれだけじゃ薄い。実はもうひとつ強力な理由があって、3年前にイタリア北部のチェントを大地震が襲い、グエルチーノのコレクションを有する市立美術館が被害を受けたこと。美術館は現在も休館したままで、再建の費用がほしいところに同じ地震大国の日本が手を差し伸べたのだ。だからこの展覧会はいわば震災復興事業に位置づけられる。それなら納得。
2015/03/02(月)(村田真)