artscapeレビュー

Site Specific Dance Performance #4

2015年04月15日号

会期:2015/03/29

兵庫県立美術館 円形劇場およびミュージアムホール[兵庫県]

2009年から過去3回にわたり、神戸ビエンナーレ関連企画として兵庫県立美術館の屋外大階段で開催されてきた本企画。場所の特性を生かすサイト・スペシフィックな試みとして、ダンス作品の上演を行なってきた。今回は、元・具体美術協会の向井修二による記号アートで埋め尽くされた屋外円形劇場と、館内ホールにて計5作品が上演された。
屋外円形劇場という場所性がうまく作品の魅力を引き出していたのが、サイトウマコトと関典子のデュオ作品『鞄女』。円形舞台の背後は壁がなく、外に開かれているため、観客は、舞台上のダンサーとともに、背後の遊歩道やその先に広がる海を視野に入れながら鑑賞することになる。歩道から、大きな鞄を抱えた男(サイトウマコト)が現われる。鞄は生き物のように動き出し、中から腕が現われて雄弁に語り出し、やがて女(関典子)の全身が鞄の中から出現する。どこか無関心そうで寂しげな男を誘惑し、突き放し、翻弄する妖艶な女でありつつ、かと思うと初めて世界に触れるような瑞々しい仕草で駆け回る少女にも変貌する。関の優れた表現力と身体的技術が発揮され、外の歩道と半ば地続きの屋外という状況も相まって、日常の光景がふとした瞬間に官能的な夢幻の世界にすり替わったような印象を与えた。
また、館内ホールでの上演で興味深かったのが、冨士山アネットの『Attack On Dance/Short Ver.』。バレエ、モダンダンス、ジャズダンス、コンテンポラリーダンス、ヒップホップなど異なるダンス経験を持つ若いダンサー10名に対して、ダンスに関するさまざまな質問を投げかけていく、レクチャー形式のダンス作品である。ダンスを始めた年齢、経験したダンスの種類、出演した作品数、師匠の数など、答えの数値順に一列に並ぶ(並ばせられる)ダンサーたち。また、「観客がいなくてもダンスは成立すると思うか」「ダンスに師匠は必要か」「社会的な問題を扱った作品は苦手か」といった質問が投げかけられる場面では、舞台を二分するYes/Noのどちらかを選択しながら、ダンサーたちが双方を行き来する。質問とそれへの反応は面白く見つつも、多様な価値観や身体経験を数値化・二極化しようとするような還元的な暴力性も同時に感じてしまった。ラストでは、ノリノリの音楽がかかるなか、全員一斉にそれぞれが自分のソロ作品を踊るのだが、「独自性や個性を尊重しています」という言い訳にも見えてしまう。むしろ見せられていたのは、用意された質問という枠組みのなかで動かされ、右往左往するダンサーたち=振付された身体ではなかったか。

2015/03/29(日)(高嶋慈)

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