artscapeレビュー
贋造と模倣の文化史──大ニセモノ博覧会
2015年04月15日号
会期:2015/03/10~2015/05/06
国立歴史民俗博物館[千葉県]
美術館や博物館にとって「ニセモノ」は大きなテーマだが、ホンモノとニセモノは思ったほど白黒つけられるものではなく、両者のあいだにはグレーゾーンが広がってるらしい。だいたいニセモノというのは美術館にとっては最大の敵だが、博物館にとっては強力な味方にもなる。実際、歴博の展示物の約40パーセントはニセモノだという。この場合のニセモノとはレプリカ(模型)のことであり、世界にひとつしかない化石などは広く教育・研究用に役立たせるためレプリカが重宝される。反対に、美術館の敵であるニセモノはおもにフェイク(贋作)を指し、美術館にあったら大問題となる。ほかにもニセモノにはイミテーション(模倣)、コピー(複製)などがあり、必ずしもネガティヴなものばかりではないようだ。同展は「暮らしのなかのフェイク」「コピー・イミテーションの世界」「博物館の『レプリカ』と『コピー』」など5部に分かれ、20-30年前の安南陶器ニセモノ事件をはじめ、「伝雪舟」「伝狩野探幽」のように真作に疑いがある書画、武田信玄や徳川家康の偽文書、浮世絵の海賊版、大学教授もだまされた「ヴュルツブルクの嘘石」と呼ばれるニセモノの化石(のレプリカ)、人魚やオニのミイラ、三葉虫や始祖鳥の化石のレプリカまで幅広く集めている。人魚のミイラはもちろんニセモノだが、明治のころまでにつくられた古いものは民俗学的な価値があり、その意味ではホンモノといえなくはない。とても楽しめる展覧会だが、多くの美術館がだまされて購入し、持て余してるはずの名画の贋作も出ていたらさらに幅が広がっただろう。
2015/03/09(月)(村田真)