artscapeレビュー

石川真生「セルフポートレート─携帯日記─」「日の丸を視る目」/「Life in Phily」「熱き日々 in キャンプハンセン」

2010年08月15日号

[東京都]

石川真生「セルフポートレート─携帯日記─」「日の丸を視る目」
会期:2010年7月23日~8月21日
TOKIO OUT of PLACE[東京都]
「Life in Phily」「熱き日々 in キャンプハンセン」
会期:7月23日~8月15日
ZEN FOTO GALLERY[東京都]

沖縄の“女傑”石川真生が今年も東京で個展を開催した。しかも去年も展覧会を開催した東京・広尾のTOKIO OUT of PLACEに加えて、今年は渋谷のZEN FOTO GALLERYでも、あわせて4つのシリーズを同時に展示している。クレイジーに暑い夏がますますホットになるような、熱気あふれる作品群だ。TOKIO OUT of PLACEでは5回の手術を受けた自分自身に携帯電話のカメラを向けた「セルフポートレート─携帯日記─」と、日の丸の旗についてのそれぞれの思いをパフォーマンスとして表現してもらう「日の丸を視る眼」(2009年撮影の撮り下ろし)を、ZEN FOTO GALLERYでは知り合いの黒人兵を追って彼の故郷のアメリカ・フィラデルフィアを訪問した「Life in Phily」(1986年)と、自ら黒人兵向けバーのホステスとして働いていた日々を記録した「熱き日々 in キャンプハンセン」(1974年)が展示されていた。どの作品も「何をどう見せたいのか」という視点と目標が明確で、ピンポイントに見る者の懐に飛び込んでくる強さを感じる。特に注目すべきなのは、1982年に比嘉豊光との共著として刊行されたデビュー写真集『熱き日々 in キャンプハンセン』(あーまん企画)に掲載された写真の貴重なヴィンテージ・プリントの展示だろう。この写真集は残念なことに写真集の被写体になった人たちとのトラブルがあって、絶版状態になっている。東松照明が「ミイラ取りがミイラになった」と称した体当たりの撮影の迫力は、ごくわずかだけ保存されていたというプリントからもいきいきと伝わってきた。石川真生自身が撮る側と撮られる側に分裂してしまうという写真集の構造自体も面白い。むずかしいとは思うが、写真集の復刊が実現できると素晴らしいのだが。なお2つのギャラリーの共同出版で、写真集『Life in Phily』が刊行されている。

2010/07/24(土)(飯沢耕太郎)

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