artscapeレビュー
束芋 断面の世代
2010年08月15日号
会期:2010/07/10~2010/09/12
国立国際美術館[大阪府]
昨年、横浜美術館で開催されたものの巡回展だが、そのときとは会場の構成が異なり、全体的に印象も違っていたのが面白い。暗い迷路状の会場を歩いていると、実に奇妙な束芋ワールドを彷徨っているよう。「個」の存在が外部世界との関わりのなかで変化していくありさまを映像として二次元から三次元に立体的に展開していくその表現に一層独特の雰囲気と説得力を与えていた。個の内面と外の世界、作品ごとに異なる「断面」の切り口が、暗闇の中で交錯していく感じが想像をさらに喚起する。吉田修一の新聞連載小説『悪人』の挿絵、手や指先、髪の毛など、身体の一部分が絡み合うドローイングがずらりとならぶ空間は不気味でありながら美しい。まさに壮観の眺めだった。
2010/07/05(月)(酒井千穂)