artscapeレビュー

3331 Arts Chiyoda

2010年08月15日号

3331 Arts Chiyoda[東京都]

秋葉原と湯島のちょうど中間辺りにあり、2005年に廃校となった旧練成中学校を改修したアートセンター。改修は佐藤慎也、メジロスタジオ他。2010年6月にグランドオープンし、3月のプレオープン時以降、様々な展覧会やイベントが行なわれている。1階にはギャラリーやカフェ、ラウンジ、地階から3階までの部屋には、多くのアーティストやクリエイターが拠点を構え、それとは別にシェアオフィスも完備している。廃校の活用事例自体はすでに多くあり、雰囲気的には例えば旧世田谷区立池尻中学校を改修したIID(世田谷ものづくり学校)などに似ていると感じたが、3331 Arts Chiyodaの特徴は、第一にアートセンターであるという点であろう。福住廉はその二つの画期的な特徴として、イベントや展示の多彩さと、(BankART1929と比較して)ホワイトキューブを施工した点を挙げている。特に後者は近年の美術館の動きに引きずられておらず、アートスペースとしての今後の存在感を獲得する可能性が指摘されている。一方、筆者は隣の練成公園との一体再生の手法に興味を惹かれた。公園と学校を幅24mの広いウッドデッキでつなぎ、広い芝生を持つ公園からアクセスが可能となっている。芝生では、多くの人々がくつろいでおり、秋葉原に程近い場所に急に現われたオアシスのように感じた。たまたま訪れたのが週末であったからか、東京で公園がこれだけ有効に使われている例は見たことがない。それほど大きくない公園であり、くつろいでいる人の密度が相当高かったことが、これまでにない印象を生み出していたのかもしれない。例えば、代々木公園や新宿御苑における人々の公園の使い方とは、まったく別の使い方である。これだけの密度で人々がくつろいでいる様子は、実は筆者はパリでの人々の公園の使い方ととてもよく似ていると感じた。その密度が生む親密感は、独特のものがあり、東京でこのような場所が生まれていたことに驚きを感じた。それほど広くないけれども豊かな芝生をもつ公園と、廃校をリノベーションしたアートセンターという、不思議にマッチした組み合わせが興味深い。

2010/07/31(土)(松田達)

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