2019年07月15日号
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artscapeレビュー

仲山姉妹「菊ヲエラブ」

2010年08月15日号

会期:2010/06/28~2010/07/15

ガーディアン・ガーデン[東京都]

「仲山姉妹」といっても実体はひとり。1984年生まれで2009年に武蔵野美術大学油絵学科を卒業し、リクルートが主催する「1_WALL」(「写真ひとつぼ展」を改称)でグランプリを受賞した。本展はその1年後の新作発表である。グランプリ受賞作の「化石」は、病気療養中の祖父の「記憶や感情の化石を掘り起こす」という、オブジェを使ったユニークなパフォーマンスを撮影したポートレートだった。だが、彼女の基本的なスタイルは北海道のじゃがいも農場、宮崎県の切り干し大根工場、そして今回の鹿児島県沖永良部島のスプレー菊の栽培農家のような、普通はあまり思いつかないような職場で実際に働き、その経験を素材として熟成させていく写真・映像作品である。日常的な場面の積み重ねではあるが、その切り取りの角度が独特で、語り口ものびのびとしていて気持ちがいい。たとえば人工栽培の菊はとてもひ弱で、針金の支えがないと根元からポッキリ折れてしまうのだという。「人間でいうと箱入り娘なんだろう。……こんな女子がいたら厄介だと思うけど、それって実は私だったりして。いま気づいたよ」(リーフレットより)。このように実体験から得られた認識をしっかりと育てあげ、写真や映像で表現していく姿勢がきちんとしていて揺るぎがないことに好感が持てる。むろんまだそのスタイルがしっかり固まっているわけではないが、何かをやってくれそうな大物感が漂っている。

2010/07/01(木)(飯沢耕太郎)

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