artscapeレビュー

高嶺格「~いい家、よい体~」展

2010年08月15日号

会期:2010/04/29~2011/03/21

金沢21世紀美術館[石川県]

正確にいえば、高嶺格の本展示は現時点でレビューすることはできない。なぜならこの展示は金沢21世紀美術館の長期インスタレーションルームにおいて、二つの展示を行なうものであり、筆者が7月末の時点で見ることができたのは前半の「よい体」のみだからである。後半の「いい家」は8月末からはじまる予定だというが、前半にだけでも触れておこう。前半の展示は、ある古い民家を解体して運ばれてきた引き戸や欄間などが壁などに配置され、また中央に設置された民家の一部の床には映像が投影されたものであった。映像は、ガラスの上を動く何人かの人々を、その下から撮ったようなものであり、床下に床上で動く人々の痕跡が残像のように浮かび上がるような仕掛けである。音声は金沢弁での問いかけに英語が答え、英語の問いかけに金沢弁で答える(答えはすべて「あんやと」「Thank you」)ものであり、さらにしばらくいると轟音が鳴り、全体がまるでリセットされたかのようになった後、再び映像と音声が始まる。民家に残る記憶の痕跡と遠い時空(他者)との対話とでもいったらよいのだろうか。轟音は、雨の多い金沢にいると時々信じられないような豪雨が降ることもあるので、感覚的に金沢の民家における時空間を引き寄せていると感じられた。ただし前半のこの展示だけでは、高嶺氏の展示意図は、まだよく分からなかった部分もある。おそらく土嚢や廃材を用いて家を構築するという後半の展示によって、その意図が明らかになってくるのではないだろうか。

展覧会URL:http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=45&d=855

2010/07/24(土)(松田達)

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