artscapeレビュー
「ヤン・ファーブル×舟越桂」展
2010年08月15日号
会期:2010/04/29~2010/08/31
金沢21世紀美術館[石川県]
ヤン・ファーブルと船越桂という、ベルギーと日本の現代美術家の二人展。接点がなかったはずの二人に、必然的ともいえる接点を見出していこうとする展示は、見ていて緊張感があった。東西の二人が対話するだけでなく、ファーブルの作品にはフランドルの絵画が、船越の作品には明治期の仏教絵画が対置され、また挟まれることで、それぞれが古典とも対話するという、キュレーションの構造が見えてくる。実際、扱っているテーマはふたりとも似ている。ファーブルは自分の血や昆虫、剥製など、生命にまつわる素材を用いた作品によって、船越は楠を用いた異形の人間像の彫刻から両性具有のスフィンクスにまで至る作品によって、生と死というテーマが深く探求されている。二人とそこに対置された古典というそれぞれに接点があるのかどうか、それが問題ではなく、現にこのようにして接点が設けられ、ベルギーと日本、古典と現在という関係を超えていくような思考を可能にする、興味深い展覧会だった。ところで、ヤン・ファーブルは『ファーブル昆虫記』で知られるジャン・アンリ・ファーブルの曾孫だと聞いて、妙に納得した。生命に対する並々ならぬ関心とともに、作曲家であり詩人であったというジャン・アンリ・ファーブルと、現代美術家でありながら演出家、振付家でもあるというヤン・ファーブルの間にも、時空を超えた関係性を感じてしまう。とはいえ、このような有り得そうな関係性を飛び越えた、今回の二人の組み合わせによる展覧会は、キュレーションの自由度と可能性といったものを感じさせた。
展覧会URL:http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=19&d=853
2010/07/24(土)(松田達)