2022年05月15日号
次回6月1日更新予定

artscapeレビュー

2011年11月15日号のレビュー/プレビュー

「ガラスの動物園」アーティスト・トーク

会期:2011/10/22

静岡芸術劇場[静岡県]

静岡のSPACにおいてダニエル・ジャンヌトー演出の「ガラスの動物園」初日アフタートークに出演した。建築系にはかなり面白い内容だった。壁としての紗幕/カーテンを重ねつつ、物語の進行に応じて空間構造を反転させたり(物語の入れ子構造と呼応している)、照明との関係で透明度を変えたり、風やローソクでカーテンが揺らぐことで特殊な場を生む。さらに衣装や、俳優と床の関係、すなわち靴や裸足などの操作によって、異なる世界の人間が同じ場にいることを強調している。斬新な空間演出をしながら、テネシー・ウィリアムズの原作にはかなり忠実で、むしろそのことによって、「ガラスの動物園」がなぜ時代を越えて、普遍的な古典になりえているかを改めて教えてもらった。シカゴ万博に触れる台詞などは省いていたが。さらに建築への補助線を引くと、ペトラ・ブレーゼや安東陽子など、最近の新しいカーテン、蚊帳、能と幽玄、そしてジャンヌトーが感銘を受けたという豊島美術館(裸足で歩く空間!)が挙げられるだろう。もちろん、演劇にしかできない空間の効果に踏み込む。また視覚的に遮蔽されているがゆえに、紗幕を突き抜ける音の存在感が際立つ。冒頭も母の声が過去の空間に呼び戻すのが印象的だった。

2011/10/22(土)(五十嵐太郎)

集合施設《みんなの家》

仙台市宮城野区仮設住宅団地内[宮城県]

竣工:2011/10/26

伊東豊雄によるくまもとアートポリス、みんなの家プロジェクトのお披露目で、仙台の宮城野区の公園につくられた仮設住宅地に向かう。一見、普通の小屋に見えるだろう。公園の独立したパヴィリオンとせず、既存の集会所と寄り添うように、ウッドデッキの縁側でつなぐ切妻の木造家屋である。これまでの前衛を抑え、始原の小屋をめざす。

2011/10/25(火)(五十嵐太郎)

山脇敏次「Dimension of Vision〈視覚の立脚点〉」

会期:2011/10/26~2011/11/06

IN STYLE PHOTOGRAPHY CENTER[東京都]

山脇敏次は広告関係の仕事をしながら、2008年頃から本格的に写真作品を制作しはじめ、今回の初個展に結びつけた。試作したプリントの数は約2,000点。それを70点余りにまで絞り込んだわけだが、その「思考の転換」のきっかけになったのは、「3・11」の経験だったという。その結果として、さまざまな要素が含み込まれた混沌としたイメージの連なりが、「Episode I〈Abstract〉」(モノクローム作品)、「Episode II〈Translation〉」(カラー作品)を経て、「Episode III〈Calm〉」(「3・11の海の写真」)に至る構造がくっきりとかたちをとってきた。
最後に一点だけ、泡立ち、盛り上がる黒い波の上を飛行機が飛んでいく写真を入れたことについては、むずかしい選択だったといえるだろう。この決定性の強いイメージによって、シャッフルと散乱の原理によって編み上げられていった写真展の構成が、予定調和で収束してしまったともいえるからだ。だが、山脇の写真作家としての将来性を考えると、決してここで終わってしまったわけではなく、むしろこれから先も自らの「視覚の立脚点」を探り当てようとする解体=構築の作業が続いていくことが予想される。これらの写真群もまた、ふたたび組み換えられ、まったく違ったかたちで姿を現わすことも充分にありえるのではないだろうか。
なお、写真展にあわせて写真集版の『Dimension of Vision』(スタジオアラパージュ)も刊行された。写真展の構成を踏襲しているが、こちらには109点の写真がおさめられている。

2011/10/26(水)(飯沢耕太郎)

鈴木涼子 個展「Magnolia──マグノリア」

会期:2011/10/01~2011/10/29

CAI02[北海道]

そして札幌なう。札幌を訪れるのはもう10年ぶりくらい。今回は展覧会取材ではなく、芸術の森美術館で開かれる企画展の作品搬入のために来たのだ。その前にまず、事務局の佐野さんの案内でCAIのギャラリーへ。鈴木涼子といえば、フィギュアの身体に人の首(本人の顔)をつなげた画像で知られるアーティストだが、今回は顔も体も生まれたままの生身の人間。一瞬セルフヌードに走ったかと思ったが、やけに筋肉質で毛深くてチンチンまで生えてる画像もあって、首から下は男と判明。そうきたか。次は人魚かケンタウロスか。

2011/10/28(金)(村田真)

横浜を撮る!捕る!獲る! 横浜プレビュウ

会期:2011/10/14~2011/11/06

新・港村(新港ピア)[神奈川県]

横浜トリエンナーレにあわせて新港ピアで開催されている「新・港村」。全国各地のアート関係のNPO法人、企業メセナ活動の組織、インディーズスクール、クリエーターたちの常設スタジオなどが、ところ狭しと建ち並び、ひっきりなしにパフォーマンスやダンスの公演、シンポジウムなどが開催されている。7月のスタート時にはまだ閑散とした雰囲気だったのだが、日が経つにつれてだいぶ賑やかになってきた。そのかなり広い会場のあちこちに写真が並んでいる。「新・港村」のクロージング企画として、11人の写真家が横浜を撮り下ろした作品を展示するという「横浜プレビュウ」の企画だ。
参加者は石内都、小山穂太郎、佐藤時啓、鈴木理策、中平卓馬、楢橋朝子、宮本隆司、森日出夫、山崎博、佐久間里美、三本松淳。中平のように「いつもの写真」を展示している者もいれば、三本松のようにスリット状の画像をブラインドのように吊るした新作のインスタレーションを試みる者もいる。佐藤や楢橋や宮本は手慣れた手法で横浜の目に馴染んだスポットを撮影し、鈴木や石内は身辺雑記的な日常のスナップを既成の空間に巧みに配置していた。モザイク状に入り組んだスペースの構造を逆に活かして、作品を会場に溶け込ませつつどう自己主張するのかが腕の見せ所なのだが、全体としてはかなりうまくいっていたのではないだろうか。
なお、有名写真家の顔見世興行的な「横浜プレビュウ」とは別に、東京藝術大学の在校生、卒業生たちの「TEAM それがすき」、BankART School飯沢耕太郎ゼミ有志による「チーム・いまゆら」、若手写真家のエグチマサル、藤本涼、横田大輔、吉田和生が合体した「MP1」など、いくつかの写真家グループが、やはり会場内でゲリラ的な展示を行なっていた。時には「横浜プレビュウ」の展示を食ってしまう作品もあり、カオス的な雰囲気がより強まっていた。

2011/10/28(金)(飯沢耕太郎)

2011年11月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ