2022年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

2012年07月15日号のレビュー/プレビュー

新川屋酒展・ノニータの京浜ローカル1.0

新川屋酒店[神奈川県]

会期:前期/2012年4月28日~5月27日 後期/6月2日~7月1日
ノニータ(谷野浩行)という名前の響きはとても懐かしい。1991年の第1回写真新世紀の審査で、彼は優秀賞(荒木経惟選)を受賞した。ちなみに、もうひとりの優秀賞受賞者(南條史生選)だったのが、現在パリ在住のオノデラユキである。
プロデューサーの淺野幸彦の企画による今回の「新川屋酒展・ノニータの京浜ローカル1.0」は、「写真家ノニータの20年の軌跡をたどり、新作まで」を全部見せようという意欲的な展覧会だ。川崎の旧京浜工業地帯のまっただなか、駅前の立ち飲みコーナーがある酒屋さんの壁全体に写真を貼り、トークイベントや撮影会が開催された。その「ノニータのシャシンの話」という第2回目のトークにゲストとして参加したのだが、全身全霊で写真に打ち込んでいく姿勢が、以前とまったく変わっていなかったことに感動した。
懐かしい写真新世紀の優秀賞受賞作品「禅とクリムト」の実物も見ることができた。スケッチブックに、モノクロームの女性ポートレートを、一見無造作に貼り込んだものだが、「これしかない」という確信と気合いが感じられる。そのテンションの高さは、近作までしっかり保たれていて、女性のスカートの中味を驚くほど生真面目に撮影し続けた「パンモロ」のシリーズなど、ノニータ以外にはなかなか思いつかないし、実行も不可能だろう。これから先さらに大きく、「全身写真家」としての可能性が花開いてくる予感がする。
なお、会場になった南武線尻手駅前の新川屋酒店の雰囲気が最高だった。昭和の匂いが漂う雑然とした店内は、展覧会の会場として大いに活用できそうだ。ノニータ展の第二弾など、ぜひ定期的に展示やトークイベントを企画していってほしいものだ。

2012/06/03(日)(飯沢耕太郎)

トポグラフィー・オブ・テラー、ピーター・アイゼンマン《ホロコースト・メモリアル》

[ドイツ・ベルリン]

ベルリンへの訪問は2001年の9月11日の同時多発テロの日に入って以来、11年ぶりである。そのときはちょうどダニエル・リベスキンドの《ユダヤ博物館》が一般オープンした日だったが、今回はその後に完成したトポグラフィー・オブ・テラーやピーター・アイゼンマンの《ホロコースト・メモリアル》を訪れた。ベルリンでは、60年以上前の戦時下の記憶が、今なお現代建築として立ち上がる。《ホロコースト・メモリアル》は、慰霊空間であると同時に、遊びを誘発する場だった。晴れた日中は子どもたちが走ったり、かくれんぼができる。だが、地下に降りて展示を見ると、その空間デザインは地上の直方体が林立するランドスケープとシンクロし、忌まわしい記憶を想起させるものだった。

写真:上=トポグラフィー・オブ・テラー、下=ピーター・アイゼンマン《ホロコースト・メモリアル》

2012/06/03(日)(五十嵐太郎)

「ARCHITEKTONIKA 2」展

会期:2012/04/05~2013/01/13

Hamburger Bahnhof[ドイツ・ベルリン]

HAMBURGER BAHNHOFの「ARCHITEKTONIKA 2」展は、建築とアートを架構する作品をまとめて紹介する興味深い展覧会だった。実際、アーキグラムの未来都市計画からダン・グラハムの建築的なプロジェクトまで、さまざまな回路で2つのジャンルは結びつく。

写真:ダン・グラハムのパビリオン計画

2012/06/03(日)(五十嵐太郎)

トーマス・デマンド展

会期:2012/05/19~2012/07/08

東京都現代美術館[東京都]

紙でつくったハリボテを撮ったたんなるトリッキーな写真、だと思っていた。実際、さまざまな屋内風景を厚紙で再現して撮ってるんだけど、見ていくうちに徐々に不穏な空気を感じずにいられなくなった。ごくありふれた浴室をスナップショットしたような《浴室》、コピー機が並んでいるだけの《コピーショップ》、壁が幾何学パターンの無響室を再現した《実験室》……。どれも人間が不在なのはいうまでもないとして、モチーフの選び方がつまらなすぎて尋常じゃないし、構図も無作為すぎて不気味なくらいだ。これはただ現実世界と紙でつくった虚構世界のギャップを見せたいわけじゃない、背後になにかもっと大きな企みが仕組まれているに違いない。それが確信に変わったのが《制御室》と題された1枚。モスグリーンの壁にメータやスイッチなどが無数に並び、上から天井板らしきものが垂れ下がっている。制作は2011年なので、これが福島第一原発の制御室内を想定したものであることは間違いないが、この本物の制御室がじつは脆弱なハリボテでしかなかったことを、また、そのときだれも人がいなかったという不在感を、これほど雄弁に、これほど不気味に表わした作品はないだろう。そうやってあらためて作品を見直してみると、どれもいわくありげな場所・状況を慎重に選んでいることがわかってくる。今回初めて見る映像作品にも驚いた。これはモチーフの選択だけでなく、そこに時間の要素を加えることで人間の知覚の曖昧さを突いているように見えた。いやあおもしろかったなあ、今年前半期の展覧会ベスト5には入りそう。

2012/06/05(火)(村田真)

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トーキョーワンダーウォール公募2012入選作品展

会期:2012/05/26~2012/06/17

東京都現代美術館[東京都]

平面・立体合わせて878人の応募者のなかから、入選者73人の作品を展示。競争率が約12倍の難関だが、その結果がこれだから、審査会場にはさぞかし巨大なゴミの山が築かれたに違いない。そんなゴミの山から宝を探すのがこの公募展の醍醐味といえよう。全体にパターン化した作品が目につくなか、最後の部屋のムカイヤマ達也と九鬼みずほの絵画がよかった。この部屋にはなぜかほかにも鮫島ゆい、江川純太ら佳作が固まっているが、優秀作品を最後にもってきたわけではないことは、受賞作品が全体にばらけていることからも明らかだ。つーか、なにを基準に受賞作品を選んでいるんだろう?

2012/06/05(火)(村田真)

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2012年07月15日号の
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