2021年12月01日号
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artscapeレビュー

2012年07月15日号のレビュー/プレビュー

勝又邦彦「dimensions」

会期:2012/06/04~2012/06/16

表参道画廊[東京都]

勝又邦彦は2000年代以来、風景写真の領域でコンスタントに佳作を発表してきた。2001年にさがみはら写真新人奨励賞、2005年には日本写真協会新人賞を受賞するなど、その作品は高い評価を受けている。ただ、彼の仕事を見続けてきて、どこか壁を突き抜けられないもどかしさを感じ続けていたのも事実だ。アイディアの多彩さ、作品の質の高さは間違いないのだが、その知的で繊細なアプローチに、どこか既視感がつきまとう所があるのだ。
今回の表参道画廊の個展は「東京写真月間2012」の関連企画として、東京国立近代美術館の増田玲が構成した。都市の遠景を横長のパノラマ的な画面におさめた代表作の「skyline」(2001年~)のシリーズをはじめとして、「screen」(2002年~)、「Hotel’s Window」(2003年~)、さらに新作の映像作品「cities on the move」が展示されていた。どれも練り上げられたいい仕事なのだが、やはりもどかしさは拭えない。作品の完成度ではなく、もっと「これを見せたい」という確信を見せてほしいと思う。
4つのシリーズのなかでは、ホテルの客室のインテリアと窓の外の眺めを同時に捉えた「Hotel’s Window」に可能性を感じた。「内/外」というステロタイプな図式からはみ出していくような、イメージとしての強度がある。さらに粘り強く、先に進めてほしい作品だ。

2012/06/08(金)(飯沢耕太郎)

シンポジウム「ベネッセアートサイト直島における建築とは」

会期:2012/06/10

ベネッセハウス・パークホール[香川県]

ベネッセハウスパークのホールにて、「生成」建築鑑賞&シンポジウム「ベネッセアートサイト直島における建築とは」が開催された。直島に安藤忠雄が設計したホテルと美術館が登場してから、今年で20年目にあたるという。また意外なことに、直島で建築に特化したシンポジウムを行なうことは初めてだという。筆者がコーディネーターとなり、西沢立衛、妹島和世、三分一博志の三者に、島々の第一印象、他の仕事との違い、建築とアートについて語ってもらう。敷地やプログラムの制約が通常の美術館に比べて、かなり自由であることから、それぞれの建築家の個性もより増幅されている。実際、犬島アートプロジェクト《精錬所》に続き、《豊島美術館》が国内最高の建築賞である建築学会賞(作品)を受賞した。2年連続でベネッセ関連の建築が選ばれていることは特筆すべきだろう。

2012/06/10(日)(五十嵐太郎)

第1回AGAIN-ST展

会期:2012/06/11~2012/06/23

東京造形大学CSギャラリー[東京都]

若手彫刻家による自主企画展。冨井大裕、深井聡一郎、藤原彩人、保井智貴という30代の彫刻家と、愛知県美術館学芸員の石崎尚が結成したAGAIN-STの企画で、上記4人の彫刻家がそれぞれひとりずつ彫刻家を選んで(田中裕之、樋口明宏、中野浩二、植松琢麿)計8人が出品する。「AGAIN-STは彫刻を問う集団である。我々は危機感を共有している。声高に死が叫ばれる絵画よりもなお、黙殺される彫刻は深刻である。(以下略)」との宣言文にあるように、このグループは現在の彫刻に危機感を有し、その可能性を問うている。絵画にもこのようなグループがあっただろうか。かつていくつかあったような気がするが、最近はあまり聞かないなあ。絵画が漫然としているというより、彫刻のほうがより危機感が深いということかもしれない。作品を見ると、いかにも彫刻然とした彫刻は少なく、どっちかといえば彫刻だったり、台座のようなものを出してたりして、けっこうおもしろい。素材だけ見ても、深井と藤原は陶、冨井は水準器やバイス(万力)などの工具、樋口はアンティーク彫刻を使っている。こうした「彫刻とはなにか」を問うような彫刻、いいかえればコンセプチュアルな彫刻の動きは、おそらく20~30年にいちど波のように押し寄せるだろう。夜、出品作家が開いたシンポジウムでは、彫刻と工芸や建築の違いや日本における彫刻教育の特殊性などが話し合われ、興味深いものだった。危機感を抱えるとはいえ、ひと世代前と違ってみんな明るく前向きだ。

2012/06/11(月)(村田真)

ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年

会期:2012/06/13~2012/09/17

国立西洋美術館[東京都]

ベルリン国立美術館といっても、そういう美術館がドーンと建ってるわけではない。ベルリン市内に点在する15の国立美術館・博物館の総称なのだ。今回はそのうち絵画館、素描版画館、ボーデ博物館の3館からの100余点を紹介。サブタイトルは「学べるヨーロッパ美術の400年」。現在開催中のエルミタージュ美術館展が「世紀の顔・西欧絵画の400年」、秋に開催予定のメトロポリタン美術館展が「大地、海、空──4000年の美への旅」だから、400年とか4000年という時間は美術史的にまとめやすいのかも。美術史4万年ともいうし。同展は15~18世紀の近世に絞り、彫刻や素描も展示している。こういう大型展での彫刻や素描はつけたし程度のものが多いので普段はちゃんと見ないが、今回は違った。彫刻はロッビア一族の彩釉テラコッタ、ドナテッロ工房の大理石レリーフ、リーメンシュナイダーら北方の繊細な木彫など、近世以降衰退していく限界芸術的な彫刻が多く、いとおしささえ感じられた。素描も必見で、ドッジョーノやギルランダイオの衣紋、シニョレッリやベッカフーミの人体などは、ある意味で絵画以上の魅力がある。でもやっぱりメインは油彩画。目力(めぢから)がすごいデューラーの肖像画、色が褪せて主題がなんだかわからなくなったルーベンスの風景画、巨匠にもヘタクソな時代があったんだと安心するベラスケスの初期作品、本物よりレンブラントらしいレンブラント派の《黄金の兜の男》、画中画の金の額縁と実物の金の額縁がハレーションを起こすコルネリウス・ビショップ帰属の室内画など、見どころは少なくない。そのなかでもクライマックスともいうべき位置にあるのが、フェルメールの《真珠の首飾りの少女》だ。似たような《真珠の耳飾りの少女》(は都美術館ね)に比べて知名度は低いけど、これもなかなかの問題作。テーブルの描き方が遠近法的におかしいとか、左上の鏡の位置が高すぎるとか、その鏡の横の窓枠の上に卵が置かれているとか、いろんな説があるが、いちばんびっくりしたのはテーブルの下にエアコンみたいなものが隠れていること。画集だと真っ黒につぶれてよくわからないけど、これなに?

2012/06/12(火)(村田真)

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佐藤志保、畠山雄豪、人見将の写真展「念力、滲透、輪郭」

会期:2012/06/13~2012/06/24

リコーフォトギャラリー RING CUBE[東京都]

昨年7月に東川町国際写真フェスティバルの関連行事として開催されたリコーポートフォリオオーディション。鷹野隆大と一緒に僕も審査に参加したのだが、そのレベルの高さにびっくりさせられた。ポートフォリオを制作し、自分の作品をプレゼンテーションするということが、写真家たちの間にごく当たり前のルーティンとして定着しつつあるということだろう。そのときは北海道札幌在住の山本顕史がグランプリに選ばれ、昨年11~12月に東京・銀座のリコーフォトギャラリーRING CUBEで個展「ユキオト」が開催された。だが次点に残った佐藤志保、畠山雄豪、人見将の作品も甲乙つけがたく、あまりにも惜しいということで、今回その3人で「念力、滲透、輪郭」と題する展示を開催することになった。
佐藤志保の「念力」はダウジング、テレポーテーション、透視、幽体離脱などの超常現象をテーマにした作品。それぞれの状況をモデルに演じてもらい、とても気のきいたテキストを付して作品化している。4×5インチの大判カメラで撮影したプリントのクオリティが高く、脱力感のあるユーモアが独特の味わいを醸し出していた。畠山雄豪の「滲透」は、川の中に顔を覗かせる石を真上から撮影し、水と鉱物との「滲透」の状況を細やかに浮かび上がらせる。作品を床に並べて、その間を観客が縫うように歩き回れるように設定したインスタレーションがなかなかよかった。人見将の「輪郭」は、人体の影を定着したフォトグラム作品。さまざまなポーズをとるシルエットに、コラージュやドローイングで装飾的な要素を付け加え、軽やかな遊び心を発揮する作品に仕上げている。
3人とも、今後の活躍が大いに期待できる。オープニングの会場で、畠山から来年秋に山本顕史も含めた4人展を開催したいという抱負が述べられた。偶然の機会で出会った4人だが、おのおのの力が融合し、化学反応を起こすとさらに面白くなるのではないだろうか。

2012/06/13(水)(飯沢耕太郎)

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