2021年12月01日号
次回12月15日更新予定

artscapeレビュー

2012年07月15日号のレビュー/プレビュー

ブルームバーグ・パヴィリオン・プロジェクト

会期:2011/10/29~2012/10/上旬

東京都現代美術館パブリック・プラザ[東京都]

美術館のエントランスの横に角張った雲みたいな建造物が建っている。このなかで昨秋から約1カ月ずつ、1年間にわたって若手アーティストを紹介していこうというのがブルームバーグ・パヴィリオン・プロジェクト。パヴィリオンを設計したのはブルームバーグさんではなく、若手建築家の平田晃久。じゃブルームバーグってなんだっつーと、金融情報プロバイダーで(なんだそれ?)、このプロジェクトのスポンサーらしい。このなかで、5~6月は毛利悠子の個展が開かれている。靴を脱いでパヴィリオン内部に入ると、さまざまな日用品や家電、楽器、機械類が置かれ、一部はコードでつながれて動いたり光ったりしている。センスのよいインスタレーションだけど、こういうのはもう少し落ち着いた場所で見たい気がする。

2012/06/05(火)(村田真)

平川典俊「木漏れ日の向こうに」

会期:2012/04/14~2012/06/10

群馬県立近代美術館[群馬県]

僕は以前、平川典俊について「なぜ東京で『東京の夢』を見ることができないのか」という文章を書いたことがある(『déjà-vu』19号、1995年4月)。そのなかで、平川のことを「知的なアラキ」なのではないかと論じた。彼の「東京の夢」(1991年)、「At a bedroom in the middle of night」(1993年)、「女、子どもと日本人」(1994年)などの写真作品に見られる、モデルの女性の性的なイメージを直接的に開示するのではなく、「じらし」や「ほのめかし」によって暗喩的に表現していく手法が、荒木と共通しているのではないかと考えたのだ。
その印象は、今回群馬県立近代美術館で開催された、彼の日本の公共美術館では初めての大規模な個展を見てもそれほど変わらなかった。ただ、平川自身がカタログに掲載されたアート・リンゼイとの対談「不確定の目撃者」でも強調しているように、彼と荒木とは「アートへのアプローチに於いては全く違った位置にいる」こともよくわかった。荒木の写真が、あくまでも彼と被写体となる女性との直接的な(私的な)関係を基点にしているのに対して、平川のモデルたちは彼のプロジェクトの一要素としてのみ取り扱われている。彼が常に問題にしているのは彼女たちの社会的な違和感や不安感であり、さらにその写真を見る観客の、抑圧され、歪められた反応のあり方なのだ。また平川が提示するイメージは、彼自身による大量のテキストによって、二重、三重に取り囲まれており、絡めとられており、観客の思考をその文脈によって方向づけていく。多くの場合、テキスト抜きに、いきなり物質化した性的イメージを突きつけてくる荒木とは、その点においても対照的だ。
それでも、平川がなぜこれほどまでに、性的な感情を刺激し、揺さぶるような写真にこだわり続けているのかという疑問は残った。彼は、自分は「写真に固執しているのではない」と何度も述べているが、僕のような立場から見ると、彼の写真のたたずまいは実に魅力的なのだ。昆虫が花の蜜に引き寄せられるような心理的な罠が、至るところに仕掛けられていて、知らず知らずのうちに妄想の糸を紡ぎ出すように導かれてしまう。他のヴィデオ作品やインスタレーション作品に比べても、彼の写真作品の巧妙さ、独特の喚起力は際立って見える。平川典俊は天性の写真家なのではないだろうか。少なくとも、彼ほど写真の力を熟知し、効果的に使用しているアーティストは他にあまりいないのではないかと思う。

2012/06/05(火)(飯沢耕太郎)

Summer exhibition inside and out in the sculpture park of Haus am Waldsee

会期:2012/06/06~2012/08/26

haus am waldsee[ドイツ・ベルリン]

ベルリン郊外の住宅街にある家をリノベーションしたHaus am Waldseeを訪れ、1970年代以降生まれの若手彫刻家展を見る。背後には大きな庭と池が展開し、在ベルリンの和田礼治郎が、詩的な環境彫刻、水に浮かぶ四畳半モデュールの強化ガラスを出品していた。

写真:和田礼治郎によるイゾラ・シリーズの作品

2012/06/06(水)(五十嵐太郎)

ARTRAIN Koganecho Artist Selection Exhibition

会期:2012/06/04~2012/06/10

吉田町画廊[神奈川県]

関内駅近くの吉田町にはなぜか画廊が何軒か並んでいる。びんびんの現代美術やバリバリのコマーシャルギャラリーはないけれど、これだけ発表の場所があるということは、それなりに需要もあるということだ。一方、そこから南西に1キロほど離れた黄金町界隈には、作品の供給源たるアーティストたちが群居する。これまであまり縁のなかった両者をつなげたのがこの企画。アートレインったってアートの雨じゃなくて、アートをつなぐ列車(トレイン)のほうね。黄金町方面からテンペラ画のメリノ、日本画の阿部道子が出品。ヒエロニムス・ボッスのような幻想世界を緻密に描くメリノと、身近な情景を克明に描写する阿部の対照的な展示だった。

2012/06/07(木)(村田真)

第13回ドクメンタ

会期:2012/06/09~2012/09/16

[ドイツ・カッセル]

ドクメンタ13は、大きな庭園、駅舎、ホテル、博物館、旧病院などを活用し、街なか展開が多いだけではなく、なんと国外のカイロやカブールなども会場になっている。会場が想像以上に分散していたために、雨のなか、2日間で全部を見ることはできなかった。しかし、小さな地方都市であるカッセルに、さまざまな場や空間が存在し、また古い建築も残っていることがよくわかった。やはり、歴史を残すことは大事である。新しい使い方を発見できるからだ。例えば、博物館に親和性の高いアートが侵入するケースも、どこからどこまでが常設の展示なのか、一瞬わからなくなる体験をもたらす。公園に点在する作品群に唯一の公式日本人作家の作品がある。大竹伸朗の家はまわりに小舟が散らばり、津波を想起させる。また正式にクレジットされていないが、ポスト災害をテーマにした韓国人の作家チームの展示のなかで、伊東豊雄の南三陸町プロジェクトや津村耕佑のファッションデザインも参加していた。
オープニングのレセプションは、鼓笛隊の演奏によって始まり、来客を庁舎に導入。案内状は出していたが、実質ノーチェックで誰でも入ることができ、夜遅くまで演奏を聴きながら飲み食いできることに驚かされた。小さな地方都市における有名な国際展が、地元の祭りとしても根づいているのだろう。

写真:上=オープニングの風景、中=駅舎会場、下=庭園に設置された大竹伸郎の作品

2012/06/07(木)(五十嵐太郎)

2012年07月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ