artscapeレビュー

2013年07月15日号のレビュー/プレビュー

プレビュー:夏のワークショップ・プロジェクト2013「なつのかくれが」

会期:2013/07/20~2013/09/16

広島市現代美術館[広島県]

夏休みの期間中、子どもやその家族をおもな対象に開催される広島市現代美術館のワークショップ型展覧会。常時参加・体験できる作品・インスタレーションの展示と、アーティストによるワークショップが行なわれる。今回は、土や布、ビニールやダンボールなどの身近な素材を使い、観客が介在することによって成立する立体作品を数多く発表している東明が「かくれが」をテーマにした作品を会場で展開。空気を送るとドーム型に大きく膨らむ布の作品や、座ると顔がかくれる不思議な形をしたベンチなどが展示される。美術館にさまざまな「かくれが」が出現する、なんて大人でも食指が動くテーマで楽しそうだ。7月21日(日)、8月17日(土)には空中に投げると円錐型に広がるパラシュートや、ピョンピョンはねる不思議な動物型のパラシュートをつくる「スペシャルワークショップ」も開催される。

2013/07/15(月)(酒井千穂)

プレビュー:サイト──場所の記憶、場所の力

会期:2013/07/20~2013/10/14

広島市現代美術館[広島県]

──広島、そして世界の様々な場所(サイト)の記憶を表現する。
広島中心部に架かる平和大橋をデザインしたことで知られるイサム・ノグチ(1904-1988)の作品には、平和記念資料館を設計した丹下健三の依頼により手がけられたものの、実現を見ずに終わったという原爆死没者慰霊碑案もある。今展ではこのように、場所(=サイト)の記憶に触発された美術表現に目を向け、場所の携える物語を可視化する作品を紹介する。映像、写真、インスタレーションなど多様な手法で新たな造形へと挑戦する美術──モニュメントとは異なる作品のありかた──の可能性を探求していく。出品作家は、フランシス・アリス、川俣正、木村友紀、桑久保徹、トニコ・レモス・アウアド、ゴードン・マッタ=クラーク、イサム・ノグチ、マイケル・ラコウィッツ、田口行弘、照屋勇賢、西京人(チェン・シャオション+ギムホンソック+小沢剛)。トークイベントやワークショップなどの関連プログラムも、どれも興味深いのでぜひ行きたい。

2013/07/15(月)(酒井千穂)

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プレビュー:ART OSAKA 2013

会期:2013/07/20~2013/07/21

ホテルグランヴィア大阪 26階[大阪府]

毎年開催されている日本最大のホテル型アートフェアの第11回目。ホテルのワンフロア全体を使って、実力派から若手まで現代美術を扱うギャラリー約50軒が、作品、展示ともに質にこだわり、作家の紹介をする。客室という展示空間で、作家やギャラリストと直接会話をしながらアートに触れるこの機会は、美術館やギャラリーで作品鑑賞するのとも異なる雰囲気や楽しさが味わえる。参加ギャラリーをつぶさに見てまわるためには時間と体力も必要だが、会場には手に取りやすい価格の作品も多い。もしもお気に入りが見つかったり購入したならば、作品や作家がより身近に感じられるようになるのもこの「ART OSAKA」の醍醐味。まだ訪れたことがない人にも足を運んでみてほしい機会だ。

2013/07/15(月)(酒井千穂)

プレビュー:大竹伸朗 展「ニューニュー」

会期:2013/07/13~2013/11/04

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館[香川県]

1980年代初頭に鮮烈なデビューを飾って以来、絵画を中心に音、写真・映像、印刷などの表現を取り込みつつ、旺盛かつ多彩な活動を展開してきた大竹伸朗(1955-)。本展は四国・宇和島への移住から25年を経て新しい局面を迎えつつある「大竹伸朗の現在」に焦点を絞った大規模な新作展で、高さ6メートルに達するという大型の平面作品や、3層吹き抜けのエントランスに設置する巨大なインスタレーションなどの最新作をはじめ、国内未発表の作品を中心に構成される。同展にあわせ、7月17日からは高松市美術館(香川県)で「大竹伸朗 展──憶速」が開催、7月20日からは瀬戸内国際芸術祭2013にて、《女根/めこん》が女木島(香川県)で公開される。また、11月24日まで開催中の第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展では大竹のライフワークとも言えるスクラップブック全66冊が出品されている。じつに「大竹伸朗」目白押しの夏。どれも見たいところ。

2013/07/15(月)(酒井千穂)

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カタログ&ブックス│2013年7月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

「内臓感覚─遠クテ近イ生ノ声」展カタログ

アートディレクション:豊永政史
発行日:2013年04月27日
発行所:赤々舎
サイズ:242×242mm、116頁
定価:2,940円(税込)

人間の諸感覚の中でもより原始的・根源的な「内臓感覚」を手がかりに、その内なる感覚に響き、語りかけ、新たな知覚の目覚めにつながる現代の表現を巡っていく展覧会「内臓感覚─遠クテ近イ生ノ声」。 その13組の出品作家の作品とテキスト、豊永政史によるアートディレクションで、内臓感覚を揺さぶる渾身の1冊が刊行されました。
金沢21世紀美術館サイトより]




前橋市における美術館構想 プレイベントの記録 2012・4-13・3

発行日:2013年03月31日
発行所:前橋市文化国際課芸術文化推進室/アーツ前橋
サイズ:182×257mm、96頁

2013年10月にオープンする群馬県前橋市の美術館「アーツ前橋」の準備のためにおこなった、約一年間の事業をまとめた一冊。ZINEをつくるアートスクールをはじめ、韓国人アーティストのペ・ヨンファンを招聘したアーティストインレジデンス、off-Nibrollを講師としたダンスワークショップ、数多くの地域アートプロジェクトなど、地域と芸術文化を結びつける実践が数多く紹介されている。


現代建築家コンセプ・トシリーズ15 菊地宏 バッソコンティヌオ 空間を支配する旋律

著者:菊地宏
発行日:2013年06月30日
発行所:LIXIL出版
サイズ:210×148mm、136頁
定価:1,890円(税込)

1972年生まれの菊地宏が建築を志した90年代から「白い建築」が注目を集めていた。建築が白ければ模型も白く、平面図では色を表現する余地がない。菊地には、建築をめぐるこの状況は、モードのうえにモードを重ね、より視野を狭めて進んでいるように思えた。なぜこれほどまでに建築は自由を奪われてしまったのか、白の呪縛から逃れ、豊かな空間をつくることができるのだろうか──。
菊地の設計活動は、こうした問いと向き合い、歴史や自然のなかに範を探していくものとなった。
空間の豊かさは、自然のリズムと協調することから生まれてくる。菊地は、環境、方角、季節、時間、光、色といった要素と人間をどのように結びつけられるかを丁寧に探り当てる。建築の最新モードから離れ、豊かな空間についてあらためてじっくりと考えるための一冊。
LIXIL出版サイトより]


リアル・アノニマスデザイン──ネットワーク時代の建築・デザイン・メディア

編著:岡田栄造・山崎泰寛・藤村龍至
サイズ:四六判、256頁
定価:2,310円(税込)

物と情報は溢れ、誰もがネットで自由に表現できる現在、建築家やデザイナーが「つくるべき」物とは何か。個性際立つ芸術作品?日常に馴染んだ実用品?その両方を同時に成し遂げたとされる20世紀の作家・柳宗理の言葉“アノニマスデザイン”を出発点に、32人のクリエイターが解釈を重ね、デザインの今日的役割を炙り出す。
学芸出版社サイトより]


Project ‘Mirrors’ 稲垣智子個展

編集:多田智美
発行日:2013年5月14日
発行:京都芸術センター
サイズ:A4判
価格:2,100円(税込)、500部限定

2013年2月5日〜26日に京都芸術センターで行われた「Project ‘Mirrors’ 稲垣智子個展」のカタログ。展覧会では、作家の稲垣自身がキュレーションした「beautiful sʌn」と批評家・高嶋慈がキュレーションした「はざまをひらく」という2つの個展が同時開催された。本カタログは、この2つの個展をもとに編集者・多田智美が制作したもので、それぞれの個展をまとめた2冊のビジュアルブックと、稲垣のインタビューと高嶋の批評テクストをまとめたテクストブック、計3冊をひとつの本に収めている。

2013/07/16(火)(artscape編集部)

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