artscapeレビュー
2014年03月01日号のレビュー/プレビュー
神戸─アジア コンテンポラリーダンス・フェスティバル♯3 Aプログラム
会期:2014/02/15~2014/02/17
Art Theater db Kobe[兵庫県]
アジアと日本で活躍するアーティストの身体表現を紹介する「神戸─アジア コンテンポラリーダンス・フェスティバル♯03」。3回目の今回はコンタクト・ゴンゾの塚原悠也がプログラム・ディレクターを務め、異なるジャンルの複数のアーティストが協働して新作舞台をつくる試みが行なわれた。プログラムは2つの日程に分かれており、筆者が見たAプログラムでは、岡田利規(劇作家、演出家)×曽田朋子(造形作家)×ピチェ・クランチェン(ダンサー、振付家/タイ在住)と、スカイチャーチ(ハードコア・バンド/フィリピン在住)×西光祐輔(写真家)×コンタクト・ゴンゾ(パフォーマンス・グループ)による2つの演目を上演。前者は、現実と夢とその中間を象徴する3人の人物の交流を描いたもので、全編にみなぎる静謐な空気が印象的だった。一方、後者は轟音と喧嘩まがいの肉弾戦が繰り広げられるアッパーなもので、最後は走り回る出演者と観客が共に「どろソース」の歌を合唱し、不思議な連帯感に包まれた。筆者は舞台を見る経験が乏しく、この日も前者の演目を見ながら自分のリテラシー不足を実感した次第。もう少し舞台を見る機会を設けなければ。
2014/02/16(日)(小吹隆文)
新野洋 展「幻想採集室」
会期:2014/02/18~2014/03/08
YOD Gallery[大阪府]
野山の花や実などを採集・観察し、それらを型取りして樹脂成型したパーツを組み合わせて、架空の昆虫オブジェを制作する新野洋。本展の新作はどれも球形で、作風を一新したと思われた。しかし、ディテールをよく見ると、それらは6本足の昆虫の集合体であり、作品の本質は変わらないことがわかる。このような作品が生まれたのは、彼が以前住んでいた住宅地から、京都と奈良の県境に位置する山村へと移住したことが大きく影響している。より濃密な自然に囲まれた地域に住むことで、相互関連的な自然界の姿を反映した造形が出現したのだ。新たな制作環境を得た新野が、今後どのように作品を発展させるのか楽しみだ。
2014/02/18(火)(小吹隆文)
7つの海と手しごと《第4の海》──ギニア湾とヨルバ族のアディレ
会期:2014/01/25~2014/02/23
世田谷文化生活情報センター「生活工房」[東京都]
「7つの海と手しごと」と題したシリーズ。4回目の今回は、ナイジェリアのギニア湾沿岸に暮らすヨルバ族がつくる藍染めの布「アディレ(adire)」と、その制作を行なう人々の暮らしが紹介されている。この藍染めの技法には、布を糸で括って染める絞り染め「アディレ・オニコ」、ミシンのステッチで縫い絞る「アディレ・アラベレ」、防染糊をへらで布に置いて文様を描いて染める「アディレ・エレコ」がある。技術は母から娘へと受け継がれ、つくられた布は婚礼の持参品とされたり、女性のラップドレスや肩掛け布として売られる。
その技法の歴史的展開はとても興味深い。「アディレ」はもともと絞り染めを指す言葉であったが、19世紀にヨーロッパから安価で目の細かい布が大量に入ってきたことで、1900年頃から糊防染による「アディレ・エレコ」が行なわれるようになり、より細かく自由度の高い文様が染められるようになったという。ギニア湾沿岸はかつて奴隷貿易で栄えた地域であり、古くからヨーロッパとの経済的な交流が盛んであった。防染糊に用いられるキャッサバ芋も、ヨーロッパ人がアメリカ大陸からアフリカに食料としてもたらしたものである。「アディレ・アラベレ」に用いられるミシンも、欧米の製品だ。アフリカが海を通じてヨーロッパやアメリカとつながったことが「アディレ」の歴史をつくり、ヨルバ族の女性たちはその時々の新しい素材、新しい技術によって、伝統を守りつつ、ものづくりを発展させていったのだ。
とはいえ、手仕事を中心としたアディレの生産は衰退しつつあるという。教育水準や所得の向上、生活様式の変化が、賃金も生産性も低い伝統的な生産方法を衰退させ、製品は合成染料を用いたプリントによる安価な量産品へとシフトしているのだ。その一方で、伝統的な製法によるアディレを高く評価する動きもあるというが、十分な市場を見出すことができるかどうか、注目したい。[新川徳彦]
2014/02/18(火)(SYNK)
プレビュー:アール・ブリュット☆アート☆日本
会期:2014/03/01~2014/03/23
ボーダレス・アートミュージアムNO-MAなど近江八幡市重要伝統建造物保存地区の8会場[滋賀県]
江戸時代以来の古い街並みで知られる滋賀県近江八幡市の重要伝統建造物群保存地区。同地区に存在するボーダレス・アートミュージアムNO-MAは、日本のアール・ブリュットを語るうえで欠かせない拠点施設だ。その活動はアール・ブリュット作品と現代アート作品を共に展示するのが特徴で、障害者と健常者などさまざまなボーダーを乗り越えていくことをテーマにしている。同館の開館10周年を記念して、同館と近隣の町家など8カ所を会場にした大規模な展覧会が催される。出品作家は、澤田真一、松本寛庸、伊藤喜彦、今村花子など、日本のアール・ブリュットを代表する面々がずらり。また、台湾のアール・ブリュット作品が特別出展される他、日比野克彦も参加し、総勢35作家・500点以上が集う一大展覧会となる。
2014/02/20(木)(小吹隆文)
プレビュー:三瀬夏之介 風土の記─かぜつちのき─
会期:2014/03/09~2014/05/11
奈良県立万葉文化館[奈良県]
奈良県出身で、現在は東北を拠点に活動する三瀬が、故郷の美術館で大規模な個展を開催する。彼の作品の特徴は、自分が暮らす土地の文化や風土を鋭敏に感受し、そのエッセンスを自己というフィルターを通して表出させる点にある。それは、絵画を通して日本を見つめ直し、日本画とは、日本で絵を描くこととは、を問い続ける真摯な作業と言えよう。本展では代表作に加え新作も発表され、関西のファンには見逃せない機会となる。
2014/02/20(木)(小吹隆文)