artscapeレビュー

2015年06月15日号のレビュー/プレビュー

芹沢銈介の家

[静岡県]

竣工:1987年

ちょうど芹沢銈介の家が公開されていたので、初めて見学した。宮城県の登米市にあった板倉の建築を移築して、東京・蒲田の自邸として使っていたもので、さらに静岡に移築して現在の場所に落ち着く。改装におけるデザインの操作は少ない。登呂の博物館、濃い石水館の隣にあると、余計に清々しい建築だと感じる。芹沢のデザインによる鉄製の椅子もカッコいい。

2015/05/05(火)(五十嵐太郎)

ふじのくに⇄せかい演劇祭 公演「聖★腹話術学園」

会期:2015/05/05~2015/05/06

静岡芸術劇場[静岡県]

ふじのくにせかい演劇祭へ。ベルギーのポワン・ゼロによる「聖★腹話術学園」は、ホドロフスキー原作の人形劇である。悪態をつく等身大に近いグロテスクな人形の生々しさもさることながら、俳優たちとの操る/操られる関係が揺らぎ、さらに演劇の場そのものにツッコミを入れるメタ感覚のコメディが面白い。また録音した音楽ではなく、ギターとドラムの生音効果もよい。

2015/05/05(火)(五十嵐太郎)

ふじのくに⇄せかい演劇祭 公演「盲点たち」

会期:2015/04/25~2015/05/05

日本平の森[静岡県]

メーテルリンクの原作による「盲点たち」は、日没後、舞台芸術公園の森に誘導される趣向の野外演劇だった。異常に密接しつつ、ばらばらな方向に並べた椅子は、藤本壮介の空間デザインの手法を想起させる。そして置き去りにされた盲目たちという設定の演劇を、観客は「聴く」。役者は観客のあいだを歩きまわり、盲人にとっての木のような存在になる。これを演出したダニエル・ジャンヌトーは、舞台美術の出身である。以前、彼の演出による「ガラスの動物園」の上演後、トークをさせていただき、空間のつくり方に感心したが、「盲点たち」も空間の効果は抜群だった。

2015/05/05(火)(五十嵐太郎)

ふじのくに⇄せかい演劇祭 公演「例えば朝9時には誰がルーム51の角を曲がってくるかを知っていたとする」

会期:2015/05/02~2015/05/06

池田地区周辺[静岡県]

鳥公園+大と小とレフの路上演劇は、観客が4グループに分かれ、異なるルートで、池田公民館周辺の住宅地、神社、大木などをめぐる。一見、平凡な街だが、リアルな世界は舞台美術では絶対につくることができない膨大な情報量をもち、楽しい体験だった。作品は、どこでも上演可能とすべく、物語の普遍性を意識し、架空の町を重ねていた。ただし、池田町の細部や歴史を掘り下げることで得られる具体性の深さから普遍性に向かう方が、僕の好みである。

2015/05/06(水)(五十嵐太郎)

ふじのくに⇄せかい演劇祭 公演「小町風伝」

会期:2015/05/04~2015/05/06

舞台芸術公園屋内ホール「楕円堂」[静岡県]

小野小町の伝説に基づく太田省吾の原作、イ・ユンテク演出、演戯団コリペの「小町風伝」は、日韓を融合した世界を出現させる。緊張感のある最初と最後、コミカルな中間、あるいは建具や家具を持ち込み、左右に部屋を設置したり、解体する場のつくり方などで飽きさせない。磯崎新が設計した楕円堂の空間と外部の関係を効果的に使うラストの演出も印象的だった。

2015/05/06(水)(五十嵐太郎)

2015年06月15日号の
artscapeレビュー